『
2014.04.16(水) The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40461
中南米向けの中国の融資:融通の利く友人
(英エコノミスト誌 2014年4月12日号)
中国は、ほかに選択肢を持たない国々に対し、不相応に多くの融資を行っている。
中国の台頭はすべての地域を変えた。
だが、既存のパターンを強めることにもなった。
中国のコモディティー(商品)需要は、原材料の供給者としての中南米諸国の立場を定着させた。
中国は、
●.ベネズエラとエクアドルから石油を、
●.チリからは銅を、
●.アルゼンチンからは大豆を、
●.ブラジルからは鉄鉱石を大量に調達している。
ブラジルとは、4月8日にトウモロコシの輸入協定も締結した。
中南米地域に対する中国の融資は、天然資源の趣も色濃い。
データは不完全だが、シンクタンクのインターアメリカン・ダイアログとボストン大学の共同研究「チャイナ・ラテンアメリカ・ファイナンス・データベース」が新たに公表した数値によると、中国は2005年から2013年にかけて1000億ドル近い資金を中南米に貸し付けた(図参照)。
群を抜いて大きいのは、中国国家開発銀行(CDB)からの融資だ。
こうした金額には大きな意味がある。
中国の金融機関は昨年、約150億ドルの融資を行った。
これに対し、世界銀行は2013年度に52億ドル、外国商業銀行は昨年、推定170億ドルを融資した。
■歓迎される中国マネー
中南米諸国に対する中国からの融資の半分以上をベネズエラが受け取っており、ベネズエラは中国向けの長期石油販売契約の利益で融資の大半を返済している。
エクアドルも似たような契約を交わしている。
2009年にCDBから100億ドルの与信枠を取り付けたブラジルの国営石油企業ペトロブラスも同様だ。
石油と引き換えに融資を行うこうした「ローン・フォー・オイル」協定は中国にとって好都合だ。
それも単に、こうした契約が長期的なエネルギー供給を確保する助けになるからだけではない。
ベネズエラやアルゼンチンのような信用力の低い国に融資するリスクを軽減することにもなる。
石油販売の売上金は、石油会社の中国口座に預金され、そこから支払いを直接吸い上げられるからだ。
金融市場が警戒する場所で中国マネーが歓迎されていることに何ら驚きはない。
2008年に債務をデフォルトしたエクアドルは、予算の穴を埋めるとともに、債券市場に復帰しようとする前に返済実績を築くために中国の融資を利用している。
しかし、中国の信用供与は、その他の国でも魅力がある。
国が融資元を多様化することは、多くの場合、合理的だ。
融資は直接投資に道を開くことができる。
またボストン大学のケビン・ギャラガー氏が指摘する通り、中国の銀行は概ね、多国籍企業とは異なるセクターで事業を展開している。
2005年以降、中国が中南米地域向けに実施した融資のうち、85%はインフラ、エネルギー、鉱業に向けられた。
借り手は融資の見返りとして、融資額の一定割合を中国製品に費やさねばならないかもしれない。
一部の観測筋は、中国の銀行の比較的緩い環境基準について心配している。
しかし肝心なのは、資金が入手可能なことだ。
融資金額は増えていくと思った方がいい。
© 2014 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
』
『
International Business Times 2014年4月17日 18時18分 更新
http://jp.ibtimes.com/articles/56585/20140417/248257/page1.htm
中国が石油埋蔵量世界一のベネズエラと関係強化
●中国の習近平国家主席は北京の人民大会堂前で行われたベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領(右)歓迎式典で儀仗兵の前を歩いた。写真: ロイター
ベネズエラの政治システムは外国からの3本の柱に基づいている。
1].キューバからの社会主義、
2].ロシアからの武器、
3].中国からの資金
である。
このシステムはウゴ・チャベス(Hugo Chavez)前大統領によって打ち立てられた。
チャベス大統領が2013年3月5日、任期半ばで病死したため、当時、副大統領であったニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)氏が後継者としてベネズエラ暫定大統領に就任し、その後、大統領選挙を経て第54代大統領に就任した。
現在、中国とベネズエラは資金融資以上の関係になろうとしている。
南米ベネズエラは連邦共和制社会主義国家で、東にガイアナ、西にコロンビア、南にブラジル、北はカリブ海、大西洋に面し首都はカラカスである。
南米屈指の豊かな自然を有する。
その一方で貧富の差が非常に大きく、ごく一部の層に富が集中しており、国内に膨大な貧困層を抱え、農牧業の生産性は低く食料品の半分以上を輸入に頼る。
2013年3月「我が司令官チャベス大統領に従い、最愛の中国と戦略的関係を深めたい」とチャベス大統領が死去した直後に中国当局者と会談したマドゥロ大統領は述べた。
中国の国家発展改革委員会の張平(Zhang Ping)主任は両国関係について「中国とベネズエラの発展的関係を維持することが、チャベス氏の魂を慰める唯一の道となる」とマドゥロ大統領が同席したテレビ番組の会談で語った。
中国とベネズエラは相互な賞賛するだけでなく共通のイデオロギーによって関係を強化している。両国はこれまでも強い経済関係を示してきた。
2013年9月、中国を訪問したマドゥロ大統領は明確な経済的アジェンダを持っていた。
両国は27の協力項目に署名しただけでなく、中国からベネズエラへ新たに50億ドル(約5,000億円)相当の融資に合意した。
政治的側面もあった。マドゥロ大統領は今後10年間、ベネズエラの経済発展を計画する二国間委員会の設立を提案したとベネズエラの首都カラカスに拠点を置く新聞『エル・ユニバーサル』は報じた。
中国の習近平主席は、マドゥロ大統領の訪問を「両国の関係を次のレベルに引き上げるチャンスである」と述べて歓迎した。
中国は現在、ベネズエラ第2の貿易相手国である。
過去10年間の緊密な交流を経て、両国の貿易は
2010年の3億5,000万ドル(約350億円)から2012年に230億ドル(約2兆3,000億円)
に達したと中国の英字新聞『中国日報』は報じた。
同年、中国の輸入の15%をベネズエラが占めた。
そのうちの3分の2はベネズエラの石油輸入によるものであり、
中国は1日約50万バレルを輸入した。
中国政府統計によるとこれは中国の石油総輸入量の10%にあたるという。
ベネズエラにとって中国の影響力は輸出入のバランスシート以上に大きい。
べネズエラは過去7年間にわたり、中国関連のインフラプロジェクトの融資と、直接融資両方において、融資国として中国に頼ってきた。
現在、両国間が契約を結んでいる300項目の中には、大きな建設プロジェクトから農業投資に至るまで様々な項目が含まれている。
2008年、中国の国家開発銀行(CDB)がベネズエラへ465億ドル(約4兆6,500億円)の融資に合意したと米マサチューセッツ州タフツ大学の研究報告書は伝えた。
同報告書によると、融資合意の、ほぼすべてが石油の販売契約によって裏打ちされているという。
これまでベネズエラ政府は異なる機関から360億ドル(約3兆6,000億円)の融資を受けているが、
ベネズエラの1日の石油輸出額の60%が、これらの借入金の返済にあてられている。
このような石油に関する契約は「債務および依存関係において、基本的に持続不可能なサイクルを形成している」と2010年、米マイアミ大学の調査は報じた。
ベネズエラは、世界最大の石油確認埋蔵量を誇る極めて重要な産油国である。
石油メジャー(国際石油資本)の英BP統計によると、2011年時点での確認埋蔵量は2,965億バレルとなっており、世界全体の石油確認埋蔵量(1兆6,526億バレル)の17.9%を占める。
しかしチャベス氏が推し進めた孤立的な経済政策も影響し、広大な原油埋蔵地の開発は停滞し、原油生産量は減少している。
石油輸出国機構(OPEC)は現在の同国の原油生産量は1998年の75%であると述べている。
ベネズエラ政府の100%出資会社であるベネズエラ国営石油会社ペトロレオス(PDVSA)は2003年以来430億ドル(約4兆3,000億円)の負債を抱え、過去10年以上に及び難題に直面しているとラファエル・ラミレス(Rafael Ramirez)石油相は述べた。
国際通貨基金(IMF)と世界銀行は迅速な民営化と緊縮財政を要請したが政府は拒否している。
中国にとっては好都合なオプションである。
「ベネズエラは、国際債券市場への投資額を制限しようという政策目標を掲げている」
とシンクタンク・ベーカー研究所のマーク・ジョーンズ(Mark Jones)ラテンアメリカ専門家はカタールの国営放送『アルジャジーラ』に語った。
そして
「中国はイデオロギーには殆ど関心がない。
同国は戦略的理由によって投資している」
と付け加えた。
一方、ベネズエラにとってイデオロギーは大きな問題である。
マドゥロ大統領は繰り返し国際機関からの支援を拒否してきた。
さらに同政権は、米国は同政権を減速させようと挑み続けていると非難している。
2014年2月、ベネズエラが反政府運動に揺れた。
この際もマドゥロ大統領は「反政府デモは背後で米国が扇動している」と批判した。
感情論は横に置くとして、ベネズエラ最大の貿易相手国は、依然として米国である。
政治的な相違はさておき、米国は多くの経済関係を有してきた。
米国通商代表部(USTR)の統計によると、
2011年の両国間の貿易は総額620億ドル(約6兆2,000億円)で、その多くは石油に関連している。
中国とベネズエラの不安定で微妙な関係は、これまで互いに好利益に働いてきた。
マドゥロ大統領は「中国の援助なしに生き残れない」と述べて国際的同盟国としての緊密な協力関係を求めている。
これに対し、中国はベネズエラの政治情勢に、より直接的な役割を持っているとは表明していない。
しかし、中国には石油が必要でありベネズエラと密接な関係を維持したいとする思惑は相変わらず強い。
記者:PATRICIA REY MALLEN 翻訳者:加藤仁美 |
*この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。
』
『
2014.05.19(月) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40715
中南米の放蕩息子ベネズエラ「石油収入中毒」で経済はもう破綻寸前
(2014年5月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
多くの外部者にとって、そして多くの内部関係者にとっても、ベネズエラは腹立たしくなるほど理解し難い国だ。
社会主義の理想郷だと感じる人もいれば、独裁国家だと考える人もいる。
どちらも、世界最大の石油埋蔵量を誇る国がなぜトイレットペーパー不足に苦しむのか、完全かつ有効には説明していない。
そこで、以下に別の視点を提供する。
イデオロギーをはぎ取れば、ベネズエラは信託財産で生活する手に負えない放蕩息子だ。
未熟で混乱し、持っているよりも多くのカネを使い、石油収入の中毒になり、中毒にかかっているという現実も認めない。
馬鹿げているだろうか?
自分の個人口座に3兆ドル相当の石油埋蔵量があったら、我々だって同じようになるかもしれない。
多くの機能不全の「トラスタファリアン*1」と同様、ベネズエラは現実と向き合えない性に苦しんでいる。
昔からずっとそうだった。
1970年代の石油ショックの時期には一時、驚異的に膨らんだ石油収入によって、甚だしい消費主義と「大ベネズエラ」というファラオのような夢が作り出された。
■ウゴ・チャベス前大統領の遺産
故ウゴ・チャベス氏の汎米「ボリバル革命」の構想は、最後の楽観的妄想にすぎない(ボリバル革命は、チャベス氏の19世紀の英雄シモン・ボリバルにちなんで名付けられたビジョンで、チャベス氏はシモン・ボリバルの亡霊が座れるように閣議で空の椅子を1つ用意していたと伝えられている)。
だが、ベネズエラも、薬物でハイになったあらゆる放蕩息子のように、時々酔いが醒めることがある。
信託財産の受託者――例えば国際通貨基金(IMF)――が、いい加減に勘定を整理し、スポーツカーを売り払い、現実に目を向ける時だと主張する時は特にそうだ。
こうした時期は、悪習を絶とうとする時に厳しい12段階のプログラム(専門用語では「構造調整計画」)で徹底した内省を求められるどの中毒患者にとっても、苦しい時期だ。
ベネズエラは、1989年と1996年に2度、構造調整を経験した。
だが、そうした厳しい現実は、中毒患者にまた薬物に手を出させ、別のどんちゃん騒ぎへと駆り立てることがある。
翌日には大抵、苦痛や絶望感、地位の喪失がもたらされるからだ。
これは宗教的な悟りのための理想的条件だ。
ベネズエラにとって、信仰を新たにするそうした時期は、1998年にチャベス氏が大統領に選出された後に訪れた。
その時チャベス氏は、時代錯誤のイデオロギーと地域的連帯、社会計画が混ざり合った独特の「21世紀の社会主義」という信条を作り出した。
*1=「trustafarian」は「trust fund(信託財産)」と「Rastafarian(ラスタファリ主義者)」が合わさった造語。多額の遺産があるために、ヒッピーや無政府主義、パンクロックといったカウンターカルチャーや快楽主義に傾倒する若者を指す
それによって、ベネズエラはまた薬物でハイになった状態を続けることができたが、そこには新たな自己正当化が加わっていた。
原油価格の高騰は、信託財産の価値の上昇を意味していた。
チャベス氏は現金をばら撒いた。
国内では、石油収入を貧困層に振り向けた――ベネズエラのおしなべて社会民主主義的な歴史の中では初めてではないが、以前よりはるかに大きな規模でカネをばら撒いた。
チャベス氏は、海外でもお金を払って友人を手に入れた。
ベネズエラが自前で提供できない医療や諜報サービスと引き換えに補助金付きの石油を受け取る、機を見るに敏なキューバ人がいた(ハバナでは、多くのキューバ人がベネズエラ人に対して抱いている侮蔑――ベネズエラ人の無能さ、非効率さ、単なる肥満に向けられるもの――には目を見張るものがある)。
ロシアの武器商人もいた。また、将来の石油供給を担保に喜んで融資する(これまでのところ500億ドル)、エネルギーに飢えた中国人もいたし、中南米地域の最貧国など、本当に困窮した人もいた。
こうした支援はベネズエラ人の自尊心と、極めて重要なことに、国内の貧困層の福祉を立て直した(加えて貴重なプロパガンダの道具となった)。
それはまた、古いやり方への回帰でもあった――しかも、以前より一層失政が著しく、無駄の多い、腐敗したやり方への回帰だった。
弱体化した制度は、チャベス氏の最も不幸な遺産だったという結果になる可能性が十分にある。
■消えゆく高揚感、「家族による介入」の時
●ベネズエラでは反政府デモが続き、治安部隊との衝突で多くの死傷者が出ている〔AFPBB News〕
中毒症状による高揚感は徐々に消滅しつつある。
経済はダウン寸前だ。
インフレ率は57%を超えており、社会的利益を浸食しつつある。
投資不足で弱った石油産業は、もはやベネズエラが必要とする収入を生み出さなくなっている。
政治の世界は激しく二極化している。
街頭の暴動で40人以上が死亡し、数百人の負傷者が出ている。
もう酔いを醒ます時だ。
だが、多くの中毒患者と同様、ベネズエラは現実から目をそらしているように見える。
サルサ歌手ルーベン・ブラデスのような温和な批判者でさえ、帝国主義の手先として片付けられる。
こうしたことが起きた時は、「家族の介入」の時だ――心配した親族が仕方なく、中毒患者を自らの行いの誤りに気付かせる緊張の瞬間である。
そのため、バチカンと中南米諸国の仲介による和平協議が政府と野党との間で行われている。
中には、政府はこうした協議を時間稼ぎに使っているだけで、政府は結局、頑として譲らず、人々を抑圧するだけに終わるのではないかと懸念する向きもある。
確かに、どちらの側にも疑念や傷ついた感情はある。
政治的に重要な問題は、ベネズエラの民主的伝統が持ち堪えられるか、ということだ。
■経済的には「酔いを醒ます」しか選択肢がないが・・・
しかし、経済的には、酔いを醒ますことが唯一の選択肢だ。
今の状況は持続不可能なように見える。
腐敗した内部関係者は、補助金付きのハードカレンシーへのアクセスなどの特権を簡単には手放さないだろう。
だが、どこかの時点で、何もしないことの政治的代償は改革のコストより高くなる。
その時我々は、半ば社会主義の政府が厳しい調整計画を実施するのを目にするかもしれない。
ことによると、それは既に始まっているのかもしれない。
ベネズエラが改革をやり通すことができるかどうかは、また別の問題だ。
チャベス主義と惜しみない出費の15年間の後で、ベネズエラ――遺産で生活する我儘な放蕩息子――は、より一層ベネズエラらしくなったからだ。
ベネズエラの凋落は実に辛いものになるだろう。
By John Paul Rathbone
© The Financial Times Limited 2014. All Rights Reserved. Please do not cut and
paste FT articles and redistribute by email or post to the web.
Premium Information
』
【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】
_