『
サーチナニュース 2014-04-04 11:16
http://news.searchina.net/id/1528944
中国「改革派」メディアが日本企業の社会貢献を絶賛の記事掲載
中国共産主義青年団の機関紙「中国青年報」は3月31日付で「東芝中国、積極的に社会貢献活動を展開」の見出しで、中国に進出した東芝グループが長年にわたり中国で地道に続けてきた社会貢献を高く評価・賞賛する記事を掲載した。
同記事は4月4日までに、大手ポータルサイトの捜狐、国営通信社の中国新聞社などが転載した。
「中国青年報」は排他的愛国主義を警戒する姿勢を示しており、極端な反日主義の論説を掲載した共産党系メディアを痛烈に批判したこともある。
「中国青年報」は東芝中国の社会貢献を評価・賞賛する論説記事を3月31日付の第6面「共産主義青年団の視点」の約半分を使って掲載した。
同論説は冒頭で、
★.「東芝グループは1972年に中国に進出して業務を初めて以来、約40年にわたる発展の歴史を持つ。
東芝グループは中国の消費者にすばらしい製品をもたらし、人々の生活の質を不断に向上させた。
同時に、東芝グループの経営方針の一環として、中国において積極的にCSR(企業の社会責任)にもとづく経営活動を推進し、中国人民の生活環境の改善のために大きな貢献をした」
と、東芝の中国社会に対する貢献を強調し、賞賛した。
具体的な貢献としてはまず、貧困地域における小学校建設を継続していることや、高等教育における奨学金の拠出や優秀な学生の表彰や奨励などを挙げ、
●.「中国の青少年育成を重視」、
●.「中国の教育分野に多くの資金とエネルギーをつぎ込んだ」、
●.「基礎的部分から、中国人の人材育成に卓越した功績があることは、社会と教育界が広く認めている」
などと紹介。
さらに、
●.「スポーツに取り組む中国人青少年の姿」や
●.「家族の愛」
を扱った公益目的の映像作品を多く作り、インターネットなどでも公開したことで
●.「人々に愛と感動を与えた」、
●.「生き生きとした映像で、多くの人々に夢と暖かい感情を伝えた」
などと評価した。
記事は、東芝の社会貢献については中国内外で評価されており、数多くの賞を受賞していると紹介し、
★.「東芝は業界の中でも責任感ある企業の模範となり、中国で活動している国際的企業の中でも、企業の社会貢献についての模範となった」
と評価した。
**********
◆解説◆
中国では2012年に反日を唱える大規模なデモ・暴動が発生し、日系企業や日本料理店が襲撃された。
日本ブランドの自動車を運転していた中国人が暴行を受け、障害が残る重傷を負うなどの事態も発生した。
多くの日本人が衝撃を受けただけでなく、その他の国の人々も大いに驚いた。
反日的な言動が目立つ韓国でも「われわれは、あのようなことはしない」との声が出たほどという。
しかし安倍晋三首相が2013年末に靖国神社を参拝した際には、中国政府・軍、共産党関係者は口を極めて非難したが、一般大衆による暴動は発生しなかった。
中国に対する国際的評価も勘案して、当局が“規制/自制”したと考えるのが自然だ。
中国における「対日反応」は、
中国指導層の「さまざまな事情」に深くかかわっており、指導階層内部におけるさまざまな勢力争いと、切り離して考えることはできない。
ごく大まかに考えれば、
★.既得権益層は 社会の不満をそらすために、日本に対して強硬な姿勢を取り、
★.既得権益層に反発する立場の人は、
日本に対して比較的穏健で、むしろ日本と協調することで相互利益の実を取ろうとする傾向が強いとされる。
**********
中国共産主義青年団(共青団)は、14-28歳までの青少年を育成するための機関。
現在の共青団の性格に大きな影響を与えたのは、1953年から78年まで同団トップの第一書記を務めた胡耀邦(後に共産党総書記など)だったとされる。
胡耀邦は
「寺院を破壊したり多くの政治犯を拘禁したチベット政策を謝罪」、
「積極的な対日友好政策」
など、共産党の歴代首脳部の中でとりわけ“開明的”な存在とされる。
しかし1986年に学生らが民主化を求めるデモを起こした際、保守派に「ブルジョワ自由化に寛容」などと批判され、失脚した。トウ小平が要求した「引締め」に応じなかったことが、政治生命の“致命傷”になったとされる。
1989年の死は、学生らが民主化を求める大きな政治運動のきっかけになった(6.4天安門事件)。
その後は胡耀邦評価が「タブー」とされる時期が続いたが、2000年を過ぎると、「胡耀邦評価」が聞かれるようになった。
2010年には温家宝首相が命日である4月15日に、胡耀邦が
「(指導者は)民衆の苦しみを子細に観察し、直接の資料を把握しなければならない」
と語っていたなどと紹介する回想記を発表した。
胡耀邦後の共青団の主な第一書記としては
●.胡錦濤(1984-85年。後に国家主席)、
●.李克強(93-98年、現首相)、
●.胡春華(2006-08年、現共産党広東省委員会書記)
などがいる。
共青団出身者は「排他的な愛国主義」および「愛国思想の煽(あお)り立て」には強い嫌悪感を示す場合が多いとされる。
社会改革については既得権益層と対立する場合が多い。
ただし、理想主義的な傾向が強い反面で、「最後の最後まで信念貫徹」といった迫力は希薄な場合があるとの批判がある。
胡耀邦の長男である胡徳平(1942年生まれ)氏も、共産党最高指導層にはなっていないが、
胡錦濤-温家宝-李克強-胡春華などとつながる、政界における共青団派の大きな支柱になっているとされる。
中国では1989年から2002年末まで続いた江沢民政権が「愛国教育」を推進したこともあり、対日強硬路線を唱えることが、極めて難しい政治的風潮が生じた。
しかし、胡耀邦に連なる人脈にはもともと対日協調(対日新思考)の考えがあり、中国で台頭する排他的愛国心を強く警戒していることもあり、民間ベースによる対日関係の改善などで、今後は積極的な動きをみせはじめる可能性がある。
』
これまで習近平路線に対立するような論説は明確には聞いたことがなかった。
今回これがはじめてである。
いよいよ反習近平派が姿を現しはじめたということになるのだろうか。
ということは、
中国共産党の大きな派閥というのは「太子党対共青団(団派)」
を軸に展開していくということになるのだが。
これまで、
★.各国駐在大使に反日論説を発表させたり
★.解放軍ならびに武装公安警察の司令官から誓詞をださせたり
と、踏み絵を実行している。
これですんなり収まれば習近平は権力を成功裏に掌握したという結論になる。
だが、解放軍トップに誓詞を出させたそのタイミングでこういう記事が出てくるというのは、反習近平派も決して勢力を失っているということではないようである。
逆にみると、どうも習近平は追い詰められており、余裕を失いつつあるのではないかと思えるような動きが目につく。
そのために「秀吉もどき」の策にでているとも考えられる。
やはりなにか
中国当局の内部で相当な確執がうごめいているような雰囲気が濃厚にある
とみても大きく外れないのではないかと思える。
『
サーチナニュース 2014-04-07 11:26
http://news.searchina.net/id/1529091
レアアースでWTO敗訴
・・・中国で自国批判の声「そもそも、わが国がルール違反だった」
中国で、レアアース(希土類)を巡る日本との争いなどで世界貿易機関(WTO)で敗訴したことについて、自国当局を批判する文章の発表され、転載が相次いだ。
重慶青年報は3日付で、「中日レアアース戦争」と題する文章を掲載し、
「WTO提訴は負け続け」、
「主要は原因は関係する官僚と専門家がWTOの規則を理解していないこと」
などと、専門家の声を交えて、自国当局を批判した。
資源・エネルギー情報の専門サイト国能網や中国有色網などが6日付で同文章を転載した。
WTOの紛争処理小委員会は3月26日までに、中国のレアアース輸出規制を巡る問題で日本や米国、欧州連合(EU)が中国の措置を不当として共同提訴した件で、日本などの訴えを認めた。
同委員会は中国に是正を求める中間報告をまとめ、関係国に通知した。
重慶青年報は同問題について、
「日本の経済産業省が米国とEUに呼びかけた上で、2012年3月13日付でEUに提訴」
と紹介し、中国の対外経済貿易大学中国WTO研究院の張漢林院長の
「日本が提訴したその最初の瞬間から、中国政府の負けは決まっていた。
なぜなら規則違反は事実だったからだ」
との言葉を紹介した。
記事は、法律問題の専門誌「法制晩報」が日本などによるWTO提訴の約1週間後の同年3月20日付で、
「中国が資源保護の目的で輸出規制をするのに必要な、自国内の生産や消費を行っているかが問題」
などと指摘する記事を発表。
結論として「国際的な協力や意思疎通も欠け、独自に関税を引き上げる方法が現行のWTOの枠組みのもとで正当性がないことは明らか」の専門家の見方を紹介した。
重慶青年報は法制晩報の記事を紹介した上で、
「それから2年後に、WTOの専門チームが出した結論は、法制晩報が掲載した中国人専門家の見方と『驚くほど一致』」
と表現。
それだけでなく、「ボーキサイトやコークスなど工業原料9種類の輸出規制が提訴された件では09年にも敗訴した」と指摘し、
「われわれがWTOに加盟して14年になるが、(将来への教訓のための)授業料を払わなくてすむようになるのは、いつになるかも分からない」
と論じた。
記事は、「レアアース戦争敗訴」の予言として、歯に衣を着せない当局批判で知られる、経済学者の郎咸平氏の2012年3月21日の意見表明にも触れた。
郎氏は日本などによるWTO提訴について、
「関連組織の専門家や官僚の、WTO規則についての能力低下を意味する」
と主張し、同時点において、
「中国はWTOに26回提訴されで、すべて敗訴」
と指摘した。
郎氏はWTOを巡る理念と現実についても言及。
例として旅客機開発を挙げ、まずWTOの
「政府は研究開発のために(企業に)補助金を与えてはならない」
との規則を紹介し、
「欧米でも政府がエアバスやボーイング機開発に補助金を与える場合もあるが、科学研究などの名目にして上手に隠している」
と指摘。
中国では旅客機開発について「498億元の補助をおこなった」などと、
政府側が産業育成に対する支持を誇示するように発表している
ことを取り上げ、WTO規則に違反している
「銅鑼(どら)と太鼓を叩いて世界中に告知している」、
「輸出した途端、WTOに提訴される」
と主張した。
記事は、2012年時点で、
「中国がレアアース紛争で必ず負ける」
との予測と共に、中国に偏っていたレアアース生産の全世界への分散と、代替素材の開発などで、
「中国は経済面でも政策面でも敗北する可能性がある」
との見方が日本で出ていたことも紹介した。
**********
◆解説◆
郎氏が示した「航空機開発」の例は、「欧米は事実上のWTO規則違反をしている」との主張が含まれるが、
欧米批判というよりも「まず形式面だけでも規則に合致させねばならない」との意識すらない中国側の「ルール意識のレベルの低さ」を批判するもの
と解釈することができる。
同記事は専門家やWTOを担当する官僚を批判したが、中国と国際ルールの不整合が発生する“根”は、さらに深いところにもある。
中国社会における組織は「トップダウン」の傾向が相当に強く、上層部の意向に対しては、実情をよく知る専門家も批判的意見を言いにくくなってしまう。
2012年のレアアース輸出規制は明らかに、
尖閣諸島の問題で対立する日本を「追い詰めよう」との目的だったが、
共産党上層部が「なにがなんでも日本を叩く」と考えた場合、
WTOの規則を熟知する担当者らも、「これはまずい」と考えていても、極めて逆らいにくくなってしまう。
中国でも、日本などがWTOに提訴した直後から複数の経済専門家が「敗訴を予言」していることから、当局内の担当者が輸出規制が規則に抵触する可能性に気づかなかったとは考えにくい。
つまり、共産党上層部が「すべてを超えて」支配する体質が、国としての「悪手」に直結したとも理解することができる。
重慶青年報が、直接言及したわけではないが、記事にはレアアース輸出規制を決めたと考えられる、
共産党・政府上層部の対日強硬論者を牽制(けんせい)する意味合いが込められていた
と解釈することもできる。
重慶青年報は中国共産主義青年団(共青団)重慶市委員会の事実上の機関紙。
共青団幹部出身者は中国の政界で「団派」などと呼ばれる一大勢力を作っている。
「団派」に属する政治家は一般的に、愛国主義の過度の発揚に警戒的とされる。
』
【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】