● 4月23日、マレーシア航空機の捜索に軍艦などを派遣する中国。そこで露呈したのは、海外基地や友好港の不足という「弱点」だ。
『
サーチナニュース 2014-04-24 16:30
http://news.searchina.net/id/1530786
「信頼できる国」で中国が4番目・・・「オレたちも信頼してない」=中国ネット
外務省がASEAN(アセアン)加盟国の7カ国で行った調査によると、日本を「もっとも信頼できる国」として挙げた人が33%で調査対象の11カ国中トップとなった。
一方の中国は5%で4番目、
韓国に至ってはわずか2%にとどまった。
調査は2014年3月1日から16日にかけて、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムのアセアン加盟7カ国、計2144人を対象に行われた。
調査結果によると、調査対象の11の国(日本、中国、韓国、米国、英国、インド、ロシア、ニュージーランド、ドイツ、フランス、オーストラリア)のうち、
★「もっとも信頼できる国はどこか」を尋ねたところ、
日本がトップで33%が「もっとも信頼できる」と回答した。
日本に次いで多かったのは、米国で16%だったが、
2位の米国でも割合は日本の半分以下だ。
中国は5%、
韓国に至ってはわずか2%にとどまった。
調査対象国でいかに日本が信頼されているかがよく分かる結果だ。
中国大手検索サイト百度の掲示板にこのほど、同結果について討論するスレッドが立てられた。
中国が信頼できる国と回答した人がわずか5%であったことについて、不満の声があがるとかと思いきや、
●.「オレたちもわが政府は信頼してないからな。
外国に中国を信頼しろと要求するほうが無理な話」
との意見があり、調査結果は“別に驚くことではなかった”ようである。
また
●.「当然の結果だな。
わが国はアセアン各国と領土問題を抱えているからな。
信頼されなければそれで良いさ。
大国は他国の信頼など必要だろうか?
実力こそが公平と尊重をもたらす」、
●.「どんなに日本を信頼していようと、お金を求めて中国にすり寄ってくるに違いない」
など、信頼されなくても別にかまわないとの意見も非常に多く、大国としての驕りが見え隠れする。 ほかにも
●.「仕方がないよ。中国のことを嫉妬しているのだから」
という意見や、
●.「日本が実施した調査なんて信用できない」
と調査結果に疑問を投げかけるユーザーもいたが、いずれにしても他国からの評価など気にしないという考えの中国人が多かったのが印象的で、中華思想がよく表れたスレッドだった。
』
『
サーチナニュース 2014-05-03 04:55
http://news.searchina.net/id/1531463
外務省の「ASEAN7カ国」を対象にした調査で、日本が「最重要パートナー国」に
・・・「調査対象国は親日の傾向」=中国メディア
「東南アジアにとって最も大事なパートナーは日本で、中国は及ばない」
と報じた。
日本の外務省がフィリピンやベトナム、インドンネシアなど東南アジア諸国連合((ASEAN)7カ国を対象に行った調査の結果を伝えたものだ。
この調査は外務省が今年3月、市場調査会社のIPSOS香港社に委託してアセアン7カ国の計2144人を対象に実施。
「アセアンにとって最も重要なパートナー」と考える国を選んでもらったところ、
★.65%が「日本」と答え最多だった。
★.中国は48%で2位、
★.米国が47%で3位
という結果。
6年前の2008年に外務省が行った同様の調査では、1位は中国だった。
この結果について「華爾街見聞」では、外務省の職員は
「安倍晋三首相が昨年、アセアン各国を訪問し、日本が経済、安全保障面で積極的に協力する姿勢をアピールしたこと、また、アベノミクスによって日本経済が回復していることなどが影響し、各国民が日本を重要視するようになったため」
と分析している。
東南アジア各国が日本を重要視するようになったことについて、
「中国との関係悪化や中国の労働コスト上昇によって日本から中国への投資が減り、
東南アジアへの投資が昨年、急拡大したこと」
を関連付けて紹介。
また、日本が政府開発援助(ODA)によって東南アジア各国を支援していること、調査対象となった7カ国に中国と領土問題を抱える国が含まれ、全般で親日の傾向があることも指摘している。
その上で「華爾街見聞」は記事を、
「中国経済は急速に発展し、人民元の世界での地位も高まっており、この東洋の大国を世界の人々は軽視できなくなった。
ただ、中国政府が覇権を唱えない態度であるにもかかわらず、中国に警戒心を抱く国は少なくない。
これは反省するべきことだ」
と締めくくった。
』
上の2つの記事を突き合わせると、結果のデータが違うようである。
どうなっているのだろうか。
『
ロイター 2014年 04月 24日 18:14 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0DA0GF20140424/
中国の海洋進出に「弱点」、不明機捜索で浮き彫りに
[香港/北京 23日 ロイター] -
先月消息を絶ったマレーシア航空機の捜索活動で、軍艦18隻などを派遣している中国。
その軍艦に救援物資を届ける同国の補給艦が今月に豪アルバニー港に入ったが、そこで浮き彫りとなったのは、
「海外基地や友好港の不足」という中国にとって頭の痛い問題だ。
乗客乗員計239人が搭乗したクアラルンプール発北京行きMH370便は3月8日未明に消息を絶ち、インド洋南部に墜落したとみられている。
中国は軍艦や沿岸警備船、民間貨物船、砕氷船を投入して捜索活動に参加しており、アナリストや域内の軍関係者らには、同国海軍の補給ラインも拡大を余儀なくされたと指摘する。
中国軍当局者らは、政府が目標とする外洋海軍力を2050年までに持つには、「海外基地の不足」などの問題を解決する必要があることを理解している。
中国は最終的には、アジア太平洋地域を支配する米海軍の対抗勢力になることを目指しており、インド洋や中東地域での戦略的利益の保護も考えている。
東南アジア研究所(シンガポール)のイアン・ストーリー氏は、
「中国軍のプレゼンスや計画が拡大すれば、米国が持つような海外で使用できる港湾拠点の確立も必要になる」
と指摘。
その上で
「(こうした拠点への)長期的アクセスを求める交渉が始まる兆しさえないことには少し驚いている」
と述べた。
対照的に米国は、日本、グアム、インド洋のディエゴガルシア島の各基地を含む広範なネットワークを有し、シンガポールとマレーシアなど友好国の戦略的港湾も活用している。
南シナ海への進出を強める中国だが、軍が持つ最南端の拠点は海南島にあるままだ。
同拠点は、マレーシア航空機の捜索活動の位置からは約3000カイリ(約5550キロメートル)も離れている。
軍事関係者らは海外港湾へのアクセスについて、マレーシア航空機の捜索やアフリカ東部での海賊対策といった人道的活動の際は比較的容易に実現できるが、緊張が高まっている時は別問題だと指摘する。
中国海軍を動きをウォッチする北京在住のアナリストは
「中国は、港湾への確実なアクセスの欠如がいずれ問題になることを認識している」
とし、
「海軍が増強を続ける中、この問題は戦略的ジレンマとなる可能性がある」
と語った。
北京大学の査道炯教授(国際関係学)は、インド洋での不明機捜索はあくまで「例外」だとし、緊張が高まった際には、米国の同盟国が持つ港湾の活用が期待できないことを中国は理解していると述べた。
同教授によると、中国は過去数年間でアジア太平洋、中東、地中海の港湾への友好的な入港を急増させている一方、長期的なアクセス確保に向けた協議はまだ当分先だという。
同教授は
「このような交渉の周囲には扱いの難しい問題があり、一部地域では歴史的な疑念も存在する。
まだ時期尚早だ」
との見方を示した。
■<米国に追いつくには数十年か>
また将来的に空母打撃群を持つ計画も、中国の後方支援面の見通しを複雑化させている。
1998年にウクライナから購入した中国初の空母「遼寧」は、軍事演習には参加しているが、完全運用にはさらなる時間を要する。
域内の軍関係者や専門家は、中国の空母が米国に対抗できる能力を有するとしても、数十年はかかる可能性があると指摘する。
カリフォルニア大学世界紛争・協力センターのTai Ming Cheung氏は、中国人民解放軍(PLA)がマレーシア航空機の捜索活動で「重要な教訓」を学んだとし、世界展開が可能な軍事力の開発を上層部が後押しする可能性もあると指摘した。
■<「真珠の首飾り」>
欧米やインドの専門家は、中国が
パキスタン、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー
などインド洋の港湾開発に資金協力する「真珠の首飾り」戦略を進めていると指摘しているが、中国側はこれに反発。
中国のアナリストらは、これらの港湾施設が中国軍の基地として使われることはないと強調。
政情が不透明であることや、基地使用には強固な戦略的信頼関係が必要とされることから、長期的アクセスの合意に至るかは疑わしいとしている。
前出のストーリー氏も、戦略アナリストの間では「真珠の首飾り」論を疑問視する声が広がっていると述べた。
多くの専門家は、中国が海洋進出を続けても主要な海上輸送路を確立するには10年以上がかかるとし、ホルムズ海峡など原油輸送の要衝の確保では米国への依存を続ける必要があるとみている。
シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究院の軍事アナリスト、リチャード・ビツィンガー氏によると、中国が領有権を主張する南沙諸島(英語名・スプラトリー)の島などは、海外の主要基地としては規模が小さすぎると考えられている。
ビツィンガー氏は
「海南島の海軍基地の先の地域では、中国が長期的に必要とするような港湾へのアクセスを手に出来る場所は見当たらない」
とし、フィリピンやベトナムとの対立悪化も障壁になっていると述べた。
海底に石油や天然ガスが埋蔵されているとみられる南沙諸島周辺では、ベトナム、フィリピン、マレーシア、台湾がそれぞれ軍の基地を展開している。
ビツィンガー氏は
「米海軍は過去100年間にわたり(海洋進出を)進めてきた」
と述べ、現在でも戦略的ネットワークの維持や強化に努めていると指摘。
中国が海洋進出強を強化し始めたのは15年ほど前だとし、「一夜にして(米国に)追いつくことは不可能だ」と語った。
』
『
JB Press 2014.04.25(金) 藤 和彦
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40511
中国外交の危険すぎる「悪弊」
今なお古典の兵法を実践する中国、有効な対抗策は?
「ASEANの2度の危機はいずれも中国が助けた。
南シナ海問題で反中になることはあり得ない」──。
4月2日付の中国紙「環球時報」はこのような見出しの記事を掲載した。
その中で中国政府高官は、
「1997年のアジア金融危機では、中国が人民元の切り下げを踏みとどまったことにより、東南アジア経済を安定させたことをASEAN諸国が忘れるはずがない。
2008年の世界的な金融危機の際も、中国は巨額を投資して経済を刺激し、ASEAN市場の安定を守った。
2度の危機とも中国の力がなければASEAN諸国の今の情勢はなかった」
と指摘する。
その上で、
「フィリピンは米国の手先になりたいようだが、それには元手が必要。
ASEAN諸国は様々な矛盾を平和的に解決する智恵があるものと信じている」
と語っている。
「カネで国際紛争は解決できる」
と言わんばかりの主張だが、筆者と同様、多くの読者も違和感を覚えるのではないだろうか。
■外交で「カネの力」を振りかざす中国
「中国人は今でも古典(孫子の兵法等)に書かれた戦略の智恵が優れていると頑なに信じ込んでいるため、主権国家から成り立つ現在の国際社会に適応できない」
と懸念を示しているのは、米戦略問題研究所(CSIS)の上級アドバイザーであるエドワード・ルトワック氏だ。
中国は、「戦国時代」の名残り、すなわち同一文化的な規範を異文化間の紛争に適用してしまう。
①.その第1の表れが、
「国際関係においても無制限にプラクマティズム(実際主義、実利主義)を使ってもよい」
と考えている点だ。
衝突が起こった際、これが同一文化内であればカネで解決できるかもしれない。
だが、異なる文化の間で起こった場合には、長年にわたる敵愾心を簡単に生み出すことになるということが中国人には理解できないようだ。
日本との関係でも同様のことが起きている。
2010年9月尖閣諸島付近の海域をパトロールしていた海上保安庁の巡視船に、違法操業をしていた中国の漁船が衝突した事件である。
中国政府は日本側に圧力をかけるため反日暴動を煽り、レアアースの輸出を禁止するなどの嫌がらせをしたとされているが、その一方で日中間の経済関係の重要さを強調する声明を発表し、対中投資を続けるよう日本に促す行動に出た。
しかし、日本は戦国時代の斉や秦、趙とは違ってプラグマティックではない。
中国側の意に反して日本は対中関係全般を見直すようになった。
その後も事態打開の見通しが立たない中で、胡耀邦元総書記の息子が今年4月6日に来日し、安倍晋三総理とも会談したと囁かれているが、
「中国の隣国いじめが地域の緊張を引き起こしている(米太平洋艦隊司令官)」状況
が改善されない限り、日中関係は冷え込んだままかもしれない。
(日本の今年第1四半期の対中投資額が前年比47%減だと判明した矢先に、商船三井の船舶が上海で差し押さえられるというとんでもない事態が発生した。これにより、日中間の『政冷経冷』状態は確定的になった)
■「故意に危機を煽る戦略」の危険性
②.「兵法」式のやり方で同一文化的な規範を誤用する2つ目の弊害は、
「外国との間の長年にわたる未解決の紛争は、故意に危機を煽ることで解決できる」
という考え方に見て取れる。
そうすることによって強制的に交渉を開始させ、紛争を収めようとするものだが、これは第1の弊害に比べてはるかに危険である。
戦国時代の中国の国家の間ではこのやり方は効果があったかもしれないが、今日のような国際的な世界の中で使ってしまうと、終わりのない戦争を引き起こしかねないからだ。
2012年10月30日付「ウォールストリート・ジャーナル」は
「過去の領有権争いにおける中国の行動を思い起こせば、尖閣諸島を巡るにらみ合いには事態が一気に激化する可能性がある」
と指摘していた。
1946年以来、中国は領土・領海を巡って近隣諸国と23もの領有権争いを繰り広げてきたが、
尖閣諸島のケースは、中国が領有権争いで軍事力を行使した事案に非常に似通っているからだ。
その類似点は、
(1).隣国が強い軍事力を持つことと、
(2).領有権を主張する地域をほとんど支配していない場合にその立場を強めるために軍事力を行使してきたことで
ある。
特筆すべきは、
★.中国は体制が不安定で指導部に決意を示す大きな動機がある時に、領有権争いで軍事力を行使してきた
という事実である。
4月8日に中国の常万全国防部長は、訪中したへーゲル国防長官との会談後の記者会見でこう述べた。
「中国政府は領土を保護する必要があれば、武力を使用する準備はできている」。
このように中国側の米国に対する反発が高まっている。
2013年12月5日に発生した米ミサイル巡洋艦と中国空母のニアミスは衝突寸前であったことが判明したが、米国を交渉のテーブルに着かせるために、中国が奇襲攻撃を仕掛けたらどうなるか。
現在、米国は深刻な経済危機の発生により膨大な軍事費の削減に取り組んでいるが、このような軍事費削減ばかりに目を奪われていると、米国の好戦的な本質を忘れてしまうことになりかねない。
ルトワック氏によれば、
「米国人はプラグティックで骨の髄まで商業主義が染みこんでいるが、攻撃を受けた時の行動は、極めて非プラグマティックで非商業主義になる」
という。
米国はこのような場合、抑制的で安上がりな選択肢があったとしても、毅然とした態度で最大戦力を投入して事に臨むだろう、そうなれば中国のみならず東アジア地域全体が大きな打撃を被ることになる。
■日本はエネルギーでロシアと協力を
孫子の兵法に固執したため、自国の崩壊という大厄災を繰り返してきた中国。
「今回の台頭は周辺国と世界全体にとっての危険ははるかに高い」とルトワック氏は警戒を強めているが、その彼が胸に秘めている戦略は「反中国同盟」である。
中国がますます凶暴化しこれを抑える必要が出てきた時、日本をかつて「ABCD包囲網」で封じ込めたように、「エネルギー供給停止」によって中国に打撃を与えることができるという戦略だ。
大国が核兵器を保有する状況下では、
戦略において非軍事的な「地経学(周辺諸国が協力して敵対国を経済的に封じ込める方策)」によるやり方の比重が高まっている
のである。
米国主導の「反中国同盟」が中東から中国へのエネルギーの流れを遮断できたとしても、陸続きのロシアやカザフスタンから原油や天然ガスが中国に供給されれば、壊滅的な打撃にならない。
だが、ロシアとその同盟国が米国や日本、豪州などとともにエネルギー遮断の輪に加われば、中国は「反中国同盟」に完全に包囲される。
しかし「米国のリーダーシップによる同盟形成は望ましくない」とルトワック氏は釘をさす。
ウクライナ情勢でも明らかなように、米国はロシアと対立しがちであるため、ロシアを中国側の陣営に追いやる可能性が高いからである。
ロシアは5月のプーチン大統領の訪中で中国にパイプラインを通じて天然ガスを供給する契約を締結するとの見方が高まっている。
両国間の交渉は10年以上にわたり価格面で折り合わなかったが、ウクライナ危機の影響でロシアは欧州以外の市場開拓を余儀なくされており、中国側の言い分を飲んでしまう可能性が高い(誇り高きロシアは、中国の単なる原料供給者の立場に転落してしまうのだろうか)。
ここで登場するのが日本である。
4月15日、日本パイプライン(小川英郎社長)は、ロシア・欧米等の企業からなる国際コンソーシアムを構築して、サハリン-首都圏間を結ぶ天然ガスパイプライン事業に着手することを表明した。
日本もロシアとのエネルギー関係の抜本的強化に乗り出したのだ。
ロシアとの国境画定に関する議定書が正式に発効した直後の2008年12月8日に、中国海洋局の監視船が尖閣諸島沖の日本領海に侵入した。
ロシアを手なずけた中国は、後顧の憂いなく海洋進出を本格化できると判断したのだろう。
このため、東アジアのパワーバランスを安定させるためには、中国とライバル関係にあるもう1つの大陸国家であるロシアと日本は提携することが不可欠である。
中国の最近の行動は、国力が頂点にあったアヘン戦争以前の「華為秩序」を復活させようとしているかに見えるが、毛沢東はかつて
「我々は謙虚でなければならない。現在ばかりでなく、永遠にそうでなければならない」
と語っていた。
中国人が一刻も早くこの言葉を思い出してくれることを祈るばかりである。
【参考文献】『自滅する中国』(エドワード・ルトワック著、奥山真司訳、芙蓉書房出版)
藤 和彦 Kazuhiko Fuji
世界平和研究所主任研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2011年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。
』
『
WEDGE Infinity 2014年04月25日(Fri) 岡崎研究所
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3782
中国と協調しがちなASEAN
米国はどう取り込むか
3月13日、Walter Lohman米ヘリテージ財団アジア研究センター部長は、米中経済安全保障検討委員会の公聴会で「中国に焦点を合わせた東南アジア政策」と題して、意見陳述を行いました。
その中で、ローマン部長は、
ASEAN諸国は米中のはざまで米中のいずれかの味方になることを避けようとするが、ASEANが地域の平和に資するように米国は仕向けるべきである、
と論じています。
すなわち、西太平洋における平和と繁栄は中国の台頭をどうマネージするかにかかっている。
米国の利益のためには、ASEANがきちんと対応するようにASEANに圧力をくわえる必要がある。
ASEANは米中のどちらかを選択したくないと言うが、これは対中関係を悪くするようなことをさせないでくれという意味である。
オバマ政権は平穏な米中関係を望み、ASEANのこういう意見を受け入れてきた。
2009年以来、中国は航行の自由や同盟国の安全など米国の利益に挑戦したが、ASEANは中国に文句を言うのを躊躇した。
ASEANは、米国と中国に同様に接し、自立性を保とうとしている。
最近、中国からの挑戦が多いが、ASEANには、中国への懸念と同時に、中国への配慮がある。
東シナ海でのADIZ(防空識別圏)設定や南シナ海での中国の漁業規則の実施に対して、ASEANはどう反応したか。
中国のADIZ宣言は、日・ASEAN首脳会議の直前であったが、首脳会議共同宣言は「国際法に従い、航行の自由と飛行の安全を確保するために協力を強化」するというもので、中国でも署名できるようなものであった。
漁業規則については、日米越比は非難したが、1月、ミャンマーでのASEAN外相会議では、中国に言及せず、最近の南シナ海での出来事に懸念を表明しただけだった。
ASEANの対中経済関係は重要である。
中国はASEANの最大の貿易相手であり、中国からの投資も多い。
東南アジア諸国の利益の錯綜とコンセンサスによる意思決定は、南シナ海での緊張のような安全保障上の深刻な危機に対処するのに有効ではない。
ここ20年、南シナ海についてのASEANの対中対話は
(1).行動規範の交渉、
(2).国連海洋法の適用、
(3).「自制」の制度化
の3点を目指してきたが、すべてで失敗してきている。
中国の行動規範協議の受け入れはそれほど評価されるべきではない。
中国の攻撃的行動は、ASEANを挑戦に立ち向かうように仕向けていない。
ASEANの行動を変えるためには、米国がASEANにより強い圧力を加えることが求められる。
クリントン元国務長官がしたように、米国は南シナ海での自国の利害を明確に主張すべきである。
クリントン長官は、海洋への主張は土地への主張に基づくべきだとした。
ASEANもそう主張すべきだし、国連海洋法仲裁裁判所にかかっている事例ではフィリピンを支持すべきである。
中国の台頭にどう対処するかが、今後数十年、西太平洋の問題である。
東南アジアとの関係でも、それが中心的課題である。
米国の利益や長期的平和と繁栄につながるように、
ASEANが中国の挑戦に応えるためには、米国の圧力を必要とするのである、
と述べています。
* * *
このローマンの意見陳述は、ASEAN諸国が中国と協調しがちであるが、米国の国益のためには、そうならないようにASEANに圧力を加える必要があると率直に指摘したものです。
大方、賛成できる意見です。
ただ、対ASEANアプローチでは、圧力よりもインセンティブを重視し、誘導していく方がより効果があると思います。
また、クリントン元長官のように、米国が何を国益と考えるのかを明確に示すことは重要です。
ASEANは、意思決定がコンセンサス方式で、内政不干渉であり、メンバーの政治体制も異なるので、対中政策で共同歩調を取って対処できるような組織ではありません。
ASEANの強化は支援すべきですが、対中政策では、個別のASEAN諸国との関係を重視していくしかないのではないでしょうか。
インドネシアとベトナムがASEANの強国であるので、この両国と対中政策について協調することを試みていくことが有益であると思われます。
』
【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】
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