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ウォールストリートジャーナル 2014年 4月 18日 19:19 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424052702304126604579509142111090098.html?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesFirst
妨害受ける香港の天安門事件記念館開設計画―26日開館予定
By CHESTER YUNG
記念館の設置をめぐり訴訟に発展する恐れもあるなか、主催組織はこの計画を推し進める考えだ。
●天安門事件の犠牲者を追悼するために昨年香港で行われたキャンドルビジル。大勢の人々がろうそくを手に祈りをささげた
広さは約75平方メートル。
現在の計画では、4月26日にオープンする予定だ。
今年で天安門事件から25周年を迎えるのに合わせた形となる。
準備を進めている香港市民支援愛国民主運動連合会の麦海華・副主席は
「香港はとても特別な場所だ。
中国本土ではタブーである天安門事件について議論する自由がまだある。
だからこそ、あの残酷な弾圧を人々に思い出させる常設記念館をここに設置したいのだ」
と語る。
連合会は昨年12月、本土観光客に人気があり、高級ブランド店が立ち並ぶ尖沙咀のオフィスビルの5階部分を計976万香港ドル(約1億2900万円)で購入。
麦氏によると、一般からの寄付などで集めた資金で600万香港ドルの頭金を支払った。
しかし、約2カ月前に問題が起きた。
ビルのオーナーたちの委員会が記念館設置に反対し、法的措置も辞さないと脅かしてきたのだ。
董呉謝香事務弁護士事務所が送った2月28日付の書簡でオーナー委員会は、記念館が
「攻撃の的となり、マスコミや警察、やじ馬だけでなく、賛成者と反対者を大量に(中略)呼び込む」
ことを懸念していると述べた。
書簡によると、オーナー委員会はどの政党にも所属していない。
このほかに、ビルの小さな2基のエレベーター(いずれも24年前に製造)が予想される多数の来館者に対応できるかどうかも懸念事項に挙げられていた。
17日に弁護士事務所に電話したが、返事はなかった。
麦氏はこうした妨害は政治的動機に基づくものとみている。
同氏によると、これまでに具体的な法的措置は取られておらず、記念館は計画通りオープンする予定。
連合会は、計画は許容される商業活動の範囲内に収まると判断し、開館の意向をオーナー委員会に知らせていないという。
17日に同ビルの何人かのテナントを取材したところ、記念館の設置を意に介していなかった。
13階の建築事務所に勤務するディオニー・トン氏は、記念館の場所は1階に近いため、大きな影響はないと思うと語った。
12階で会社を経営するレイモンド・イップ氏は、記念館はさほど多くの問題を起こすことはないだろうしながらも、
「記念館の名前はとてもセンシティブだ。
人々のかんに障り、関心を引き付けるだろう」
と語った。
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サーチナニュース 2014-04-21 15:45
http://news.searchina.net/id/1530370
香港で天安門事件「六四紀念館」試験開業、民主運動家に入国拒否
香港で20日、1989年に発生した「6.4天安門事件」関連の展示を行う「六四紀念館」の試験営業が始まった。
正式開業は26日。
20日の開業式典に出席する予定だった民主運動家の楊建利さんは入国(入境)を拒否され、引き返した。
香港アップル・デーリーなどが報じた。
「六四紀念館」は、天安門事件について
「六四を忘れるな。良識に呼びかけよ」
をテーマに、1989年の民主化運動や6月4日の天安門事件の資料などを常設展示する。
また、関連するテーマで半年に1回の入れ替えで、同事件の延長線上にある各種テーマを展示する。
建設資金は976万香港ドル(約1億3000万円)で、香港市民支援愛好民主運動聯合会(香港支聯会)が援助した。
1989年の民主化運動に参加し、現在は米国に拠点を置く楊建利さんは20日の開業式典に出席する予定で19日夜に香港に到着したが入国が認められず、20日に出発地点の台湾に向けて引き返した。
楊さんは北京師範大学数学科の卒業生。
天安門事件の後に米国に移り、哲学博士、政治経済学博士、数学博士などの学位をえた。
中国当局を批判する発言を繰り返したため、入国禁止のブラックリスト49人のひとりとされ、新たなパスポート発行も拒否された。
2002年に、中国東北地方で発生した失業者による大規模な抗議運動を取材しようと、知人のパスポートを使って入国したところ、逮捕され、04年にスパイ罪と不法入国罪で懲役5年の有罪判決を言い渡された。
2007年に釈放され、米中当局が協議した結果、ふたたび米国に渡った。
それ以後、香港への立ち寄りも認められなくなったという。
楊さんは19日に香港への入国拒否された後にBBCの取材に応じ、19日の香港入国拒否は
「北京政府が香港基本法に違反して、香港の行政手続きに干渉している」
との見方を示した。
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◆解説◆
香港では「2047年問題」に関心が集まりつつある。
中国に返還されてから50年が経過するからだ。
清国はアヘン戦争の講和条約である南京条約で1842年、香港島を英国に永久割譲した。
1860年には九龍半島南部も永久割譲。
1898年には、深セン河以南、九龍半島北部、235の島を99年間の期限で英国に租借した。
英国にとって1997年に中国に返還義務があるのは租借部分だけだったが、英中両国は1984年に割譲地、租借地すべての一括返還で合意。
トウ小平が「香港では50年間、社会主義を適用しない」との「一国二制度」を約束したことで、英国側も了承した。
香港では、2047年あるいは48年に、中国政府が「体制の変更はしない」と約束した期限が切れるとして、「香港の将来」を心配する声が強まっている。
中国大陸側による「圧力」が高まっているとして、警戒感を強める人も珍しくない。
台湾で3月に発生した、馬英九政権が進める大陸側とのサービス貿易協定締結に反対する運動に対しても、香港からかなりの人数が応援に駆け付けた。
中には
「台湾の友は私の屍(しかばね)を乗り越えて進め。
香港はすでに死んだ」
とのプラカードを掲げる人もいた。
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読売新聞 2014年05月06日 16時06分
http://www.yomiuri.co.jp/world/20140506-OYT1T50066.html
「天安門事件」の研究会出席者、相次ぎ拘束
【北京=竹内誠一郎】
中国で学生らの民主化運動が武力弾圧された1989年の天安門事件に関する研究会に参加した改革派知識人や人権派弁護士らが、相次いで当局に連行、拘束されていることが6日わかった。
関係者によると、研究会は北京市内で3日、事件が6月4日で25年の節目を迎えるのを前に、共産党が「反革命暴乱」と定義した事件の再評価などを求める趣旨で、10数人が参加して開かれた。
開催後、参加者の多くが当局から呼び出しを受けたり、連行されたりし、著名な人権派弁護士の浦志強氏の刑事拘留処分が決定したことが確認されたほか、民主活動家の胡石根氏ら数人が消息不明となっているという。
香港の人権団体「中国人権民主化運動ニュースセンター」は6日正午頃、参加者のうち計9人が当局に拘束され、北京電影学院の崔衛平、●建の両教授ら5人がいまだに釈放されていないと伝えている。(●は赤におおざと)
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テレ朝ニュース (05/07 08:00)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000026405.html
中国、人権派弁護士を拘束“天安門”討論会に参加
中国の著名な人権派弁護士・浦志強氏が、警察当局に拘束されました。
浦氏は天安門事件に関する討論会に参加していたとみられ、そのことが拘束につながった可能性もあります。
関係者によりますと、浦氏は、社会の秩序を乱した容疑で6日早朝に北京の警察当局に拘束され、現在は市内に留置されているということです。
浦氏は2010年にノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏とも親交があり、人権派の弁護士として知られています。
アメリカ系メディアのボイス・オブ・アメリカは、浦氏が3日に開かれた天安門事件に関する討論会に参加したため拘束されたと報じています。
天安門事件から来月4日で25年を迎えますが、当局は事件に関する言論への統制を強めています。
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サーチナニュース 2014-05-07 18:31
http://news.searchina.net/id/1531680
天安門事件25周年、北京はこの10年で「最も厳しい」治安維持体制へ=米華字メディア
米国の華字メディア・多維新聞は6日、6月4日に天安門事件25周年を迎える北京市では、例年よりも早く、この10年で最も強い治安維持体制が取られていると報じた。
記事は、天安門事件25周年までまだ1カ月近い時間があるにもかかわらず、同市内の治安維持体制が強化されたと伝えた。
また、
「例年は4月15日の故・胡耀邦元共産党総書記の命日より始まり、5月20日に強化、6月初めにピークに達する活動家の監視が、今年は1月17日の故・趙紫陽元共産党総書記の命日からスタートした」
と中国の人権活動家・胡佳氏が解説したことを紹介した。
胡氏はそのうえで、
「この10年で最も厳しいとされた2013年を上回る厳戒態勢」
と語った。
胡氏は「天安門事件25周年に天安門に帰ろう」活動の発起人として、当日は黒シャツを着て天安門広場に集まるとともに、該当でプラカードを掲げながら事件の再評価を要求する行動を起こすよう市民に呼びかけているという。
記事は、胡氏が
「全国の多くのネットユーザーが警察から『北京に来るな、イベントに参加するな。
天安門付近で黒シャツ集団の出現などあってはならない』と圧力をかけられている」
と語ったことを伝えた。
記事はまた、5月3日に行われた清華大学教授らによる「六・四記念シンポジウム」に参加したメンバーが翌日以降に公安機関から調査を受けたことを紹介。
4月に胡錦濤元国家主席が胡耀邦元主席の旧居を訪ねたことが事件再評価に期待を持たせる一方で、体制内の勢力の結束は固く
「80年代の改革開放の生き生きとした時代への回帰は難しい」
とする、北京市内の活動家の意見を伝えた。
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サーチナニュース 2014-05-07 20:07
http://news.searchina.net/id/1531683
天安門事件からまもなく25年、識者らが相次いで拘束
・・・民主化運動関係者らに警告か=米華字メディア
米国のラジオ放送局・ラジオ・フリー・アジア(ウェブサイト版)は6日、1989年6月4日に発生した「6.4天安門事件」からまもなく25年を迎えることについて、
「北京市当局は民間の記念活動を阻止するため、準備を整えている」
と報じた。
「6.4天安門事件」の真相を追究する研究会に所属していた学者や弁護士ら、少なくとも5人が6日までに北京市当局に拘束された。
報道によれば、拘束された5人のほかにも、関係者ら10数人が呼び出しを受けたり、行方がわからなくなったりしている。
香港市民支援愛国民主運動連合会は、当局の動きについて
「6.4天安門事件の25周年記念期間中における民主化運動を警戒している」
と指摘した。
北京市当局に拘束されたことが確認されたのは、人権派弁護士の浦志強氏のほか、北京電影学院の〓建教授、作家の劉萩氏、学者の徐友漁氏、民主活動家の胡石根氏の5人だ。
記事によれば、5人は「騒動挑発罪」の容疑で、留置場にあたる北京市第一看守所に拘束されているという。
(〓は「赤」におおざと) 浦志強氏らが拘束された理由として、人権活動家の胡佳氏は
「3日に北京市内で6.4天安門事件に関する研究会に参加したためではないか」
との考えを示した。
記事は、今年が「6.4天安門事件」から25周年目という節目の年に当たることを受け、
「民間で大規模な記念活動が行われることを警戒した北京当局が、関係者に向けた警告として浦志強氏などを拘束した」
などと報じた。
胡佳氏によれば、浦志強氏は現地時間4日午後11時ごろに「お茶を飲む」という名目で連れ去られ、翌日5日午前4時ごろに衣服を取りに短時間帰宅したという。
さらに同日午後、当局が浦志強氏の自宅を訪れ、書籍やパソコンなどを押収した。
香港市民支援愛国民主運動連合会の李卓人主席は、「6.4天安門事件」の真相を追究する研究会に所属していた学者や弁護士らが相次いで拘束されたことについて、
「当局がこれだけの緊張を見せ、厳しく取り締まるのは、
中国政府が今年何らかの事件が起きることを恐れているため」
と指摘。
さらに、中国政府が25年間にわたって「6.4天安門事件」についての議論を許さず、情報を封鎖してきたのは、記念期間中に民主化運動を行わせないためでもあるとの見解を示した。
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「WEDGE Infinity」 2014年05月13日(Tue)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3845?page=1
天安門事件25周年で盛り上がる
胡耀邦追悼に保守派警戒
「胡耀邦を持ち出して転覆図る輩に警戒せよ」
4月からにわかに故・胡耀邦総書記を追悼する機運が高まっている。
習近平国家主席と関係が近いとされる胡耀邦総書記の息子、胡徳平・前全国政治協商会議常務委員(日本の参議院議員に類似)が訪日し、硬直した日中関係を打開する「密使」として注目されたことがあるかもしれない。
一昨年引退した胡錦濤前国家主席が故・胡耀邦総書記の旧家を訪れたことも大きいだろう。
4月15日は胡耀邦が逝去してからちょうど25年目に当たる「節目の年」だった。
きたる6月4日は天安門事件の発生から25年目でもある。
胡耀邦の急死に対する追悼が天安門事件の引き金になったため両者は密接に関係していることから当局は両者をどう扱うか頭を悩ませてきた。
天安門事件が「動乱」だという政府の公式見解が覆される可能性は低いが、各ネットメディアでは胡耀邦の追悼特集を組む動きが見られ、彼の根強い人気が垣間見える。
生前の彼はリベラルで言論の自由や若手幹部の抜擢、改革路線や自由化推進を行ったことから多くの人の共感を呼び、その早すぎる死を悼む声が強い。
それでも党や政府公式メディア(『人民日報』、『求是』誌や新華社など)が胡耀邦追悼を取り上げることは結局なかった。
胡耀邦追悼の動きが天安門事件の再評価要求に繋がりかねないので当局の警戒感は根強い。
■胡耀邦評価を巡る右派と左派の綱引き
●「鳥有週刊」サイトの胡耀邦追悼を警戒する文章 http://www.wyzxwk.com/topic/zhengjing/31.html
今回、保守派の立場から胡耀邦追悼を警戒する論評を紹介したい。
「鳥有網刊」サイトの論評
「胡耀邦記念に便乗しての転覆を警戒せよ 国安委が襲来」
という文章だ。
同サイトは中国国内で保守グループが開設していた「鳥有之郷」サイトが基になっているが、言論の激しさと論争の大きさから当局によって一時閉鎖された経緯がある。
そのサイトをリニューアルしたのがこの「鳥有網刊」である。
一時期、ネット書店の形でほそぼそとサイトを開設していたが、その後、論評ページも開設され、毎日更新されている。
この文章が興味深いのは、文章を執筆した保守的な左派が、右派※1による胡耀邦や天安門事件に対する政府の評価を覆させようという動きを警戒しているのが窺えることだ。
※1 中国で右派左派の区分を単純化すれば、日本と逆である。一般的に右派は民主や自由など普遍的価値を主張するリベラル、左派は中国特色や毛沢東を礼賛する保守勢力と捉えられている。
もう一つ興味深いのは左派が4月15日に開かれた国家安全委員会の初会合が胡耀邦追悼を牽制していると捉えた点である。
彼らによると、胡耀邦や天安門事件の再評価の方向へ誘導しようという右派による試みに現政権がひとまずNOと態度表明したというのだ。
胡耀邦評価を巡り右派と左派が政権を自己陣営に引き込もうと綱引きをしている様子が本文から窺えるのだ。
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【2014年4月17日『鳥有網刊』ネット(抄訳)】
南方新聞グループ※2は、胡耀邦記念に名を借りて総書記(習近平なのか胡錦濤か分かりにくいが胡錦濤ではないかと思われる:筆者)を担ぎ上げて世論を盛り上げ転覆させるような過ちを犯させようとしている。
時を同じくして国家安全委員会の初会合も開かれた。
●本文章が批判する鳳凰網の胡耀邦記念サイト
4月15日は胡耀邦逝去から25周年だった。
この間最も重要な活動は党の前総書記(胡錦濤を指すが、名指しはしていない:筆者)が墓参りに訪れたことだった。
先週金曜日(11日:筆者)に習近平動向をウォッチしている「@学習ファン団」(著名なブロガー:筆者)がこの墓参りの写真をウェブに掲載した。
騰訊社(中国版ツイッターQQを運営する会社)は、関係部門からの再三の削除命令にもかかわらずこれを転載し、強制措置が取られてからやっと削除された。
胡徳平の友人として鳳凰網※3はフロントページで「忘れない記念のために―胡耀邦逝去25周年」専門ページを設け、「彼の名は不朽だ」と主張している。
捜狐サイトは、「習仲勲(習近平の父親:筆者)を忘れない」として、最高指導者の習近平という後ろ盾を持ち出して、フロントページに「胡耀邦と習仲勲等が改革開放の新局面を創り出す」と掲載した。
金で釣られコントロールされたメディアが習仲勲を担ぎ上げ、習近平さえも持ち出して資本主義自由化という「邪悪な道」を歩もうとするのは初めてのことではない。
※2 南方新聞グループ:広東を拠点とする中国では比較的リベラルなスタンスで評判の新聞社で、昨年には当局による年頭の辞紙面の差し替え要求に反発して話題になった。
※3 香港を拠点とするメディア・グループのニュースサイト。大陸で唯一ニュースのテレビ放送、雑誌出版を許可されていることからも親中派といえる。
習仲勲の再評価と胡耀邦はどう関係するのか。
『党史博覧』誌は、葉剣英、王震こそが習仲勲問題に少なからぬ心血を注ぎ、習仲勲のために名誉回復を求めた人物と指摘している(一般的に言われるような胡耀邦ではなかったと主張したいのだろう:筆者)。
「薄一波の名誉回復は党の11期3中全会で試みられたが、実際には胡耀邦の地位は高くなかったため、決定的役割を果たすことは不可能だった」という。
■胡耀邦に対する元老たちの不満
胡耀邦が指導者だったのはわずか7年間で、その時期さえ実際に舵を取っていたのは鄧小平であり、厳密には彼は鄧小平の下で実務を担当していただけだ。
彼が主張したとされる「民主、自由」は、実際には「資産階級自由化」を目指すもので党と国家には有害無益だ。
もし彼が人心を得ているというならそれは一部の資産階級右派の心に過ぎない。
胡耀邦は当時、大寨(「農業は大寨に学べ」という毛沢東が率いた社会運動:筆者)に反対し、大規模な農耕田や水利建設にも反対したため農民出身の陳永貴副総理(1915-1986年)は大いに不満だった。
陳副総理は胡耀邦を「胡乱邦」(めちゃくちゃで国を乱す:筆者)と蔑んだ。
改革開放以来の実践では農耕地、水利建設を重視せず、自然災害を抑制する力は減退した。
陳永貴は正しく、胡耀邦は誤っていた。
彼が「4つの基本原則」※4を主張せず、資産階級自由化への反対にも力を入れなかったことから鄧小平、陳雲、李先念、王震、薄一波、彭真、余秋里、楊尚昆(元老と呼ばれる天安門事件当時権力を持っていた老人たち:筆者)は皆彼に不満だった。
「左派の王」と呼ばれた故喬木、鄧力群は言うまでもない。
中央で彼を支持したのは、趙紫陽、万里等数人に過ぎず、立ち上がって彼を支持したのは皆無だった。
胡耀邦は毛沢東の信仰者たちへの政治的粛清を行った。
その範囲は広く、鎮圧は壮絶で悲惨で、建国以来例のない政治運動だった。
資本家や腐敗官僚、漢奸(中国的売国奴の呼称:筆者)に自由と人権を与えた一方、毛沢東信仰者には自由と人権を与えなかった。
これが彼のいう「普遍的価値」だ。
※4 60年代から70年代にかけて中国全土で起きた「文化大革命」の混乱後に1979年に鄧小平が提起した原則。「社会主義の道の堅持」、「人民民主主義専制の堅持」、「中国共産党の指導の堅持」、「マルクス・レーニン主義の堅持」を指す。
台湾独立、チベット独立、ウイグル独立等、分裂勢力の盛り上がりも胡耀邦時期に始まった。
彼は封建集権と国家統一、分裂勢力と民族平等、漢奸と自由民主を混同した。
その結果、封建集権反対の旗を掲げ、国家の統一を破壊し、民族平等の旗を掲げ分裂勢力を創り出し、自由民主の旗を掲げ漢奸を育てる羽目になった。
中国を分裂内乱という災難への縁に追い込んだ。
生態系を破壊し、資源を掘り尽くして子孫を断絶させるような発展方式も胡耀邦時代に始まったことである。
4月15日の新華社電によると、中央国家安全委員会が初めて会議を開催した。
シンガポール『聯合早報』は、昨日は前書記の胡耀邦逝去25周年であり、XX事件25周年(原文のまま。
XXは「天安門」あるいは「六四」が入るのだろう。
中国では「天安門事件」と呼ばず、通常、「六四政治風波」と呼ぶ:筆者)が近づいており、共産党政権はこの時期を選んで国家安全委員会の初会議を開催したと指摘している。
内外勢力がXX記念を借りて事が起きるのを防止することを念頭においているというわけだ。
胡耀邦の次には、趙紫陽記念が来るだろう。
順調にいけば最後には彼らは「資本階級指導下の全面専制」を祀り上げて憲法を全面否定しかねない。
その後、完全にアメリカに投降して中米両国の反動勢力で共同の下で人民による清算を心配することなく、人々を統治する野心をも実現するだろう。彼らの計画の綿密さには感服せざるをえない。
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■既得権益を背景に跋扈する保守派
【解説】
本文を読むと現在、中国が直面するあらゆる諸悪の根源は、胡耀邦を代表とする「市場経済化政策」を導入した「資本主義の道を行く派閥」(走資派)のせいだ、と言っているかのようだ。
中国が依然共産主義を標榜し、体制が旧態依然としており、既得権益層が各界を牛耳って政治改革を阻害していると中国国内においてさえも認識されるようになりつつあるなかでのこのような主張は一種異様で、非常に興味深い。
こうした考えは、逮捕された薄熙来が高らかにうたった「毛沢東礼賛」を支持する「毛左派」の典型的な考え方であろう。
中国でにわかに盛り上がりつつある胡耀邦逝去の記念は、同時に1989年に起きた「天安門事件」の評価如何に関わってくるため共産党当局にとっては極めて慎重にならざるを得ない事情があろう。
そのためシンプルに単純化すれば保守派と改革派がせめぎ合っていると捉えることはできるだろう。
この文章を読みすすめると白けた気持ちになるだろう。
共産党の歴史に翻弄され続けてきた中国国民が、相変わらず引きずり回されていることを感じさせるものだからだ。
過去の指導者についての自分に都合よい解釈で自己勢力の拡張に利するような意図が背後に見え隠れするからだ。
この文章で正当化している人物を検証してみると既得権益を背景に跋扈する保守派の姿が見え隠れするだろう。
まず薄一波。
言わずと知れた先般無期懲役刑を受けた薄熙来・元重慶市委員会書記の父親である。
そして軍の元トップである中央軍事委員会副主席の王震。
その息子の王震氏は軍の総参謀部系統の軍需産業である保利集団を率い、そして金融業界、軍需産業にも隠然たる影響を行使し、中信集団を長年牛耳ってきた。
こうした高官の子弟たちは「太子党」として親の権力を利用しビジネスに乗り出し、中国での繁栄を謳歌している者たちだ(5月1日にも電力業界を牛耳る李鵬元首相の娘の疑惑を紹介した)。
彼らにとって体制がひっくり返ることは既得権益が脅かされることを意味するのだ。
「天安門25周年」再評価を求める民主活動家たちへの当局の警戒感を示す出来事があった。
「天安門事件」勉強会に参加した浦志強弁護士などの活動家たちが当局に拘束されたのだ。
また著名なジャーナリスト高瑜女史が「機密漏えい」容疑で逮捕されている。
彼女は政府が教育機関などに通達したとされるイデオロギーに関する通達(通称「9号文件」)の内容を漏らした容疑だという。
この文章を読むと胡耀邦が総書記を失脚させられた口実がよくわかるが、
それは今日でも効果をもつ。
汚職取締りが中国における既得権益層を打破できずに、政府と民衆が既得権益層にからめとられている様子が窺える。
既得権益層は決して自分の利益と地位が脅かされることをあからさまには言い立てないが、イデオロギーや治安や秩序維持の重要性を言い立て党の権威を強調する。
本文は中国を制約する既得権益層のロジックを余すところなく示すものである。
弓野正宏(ゆみの・まさひろ) 早稲田大学現代中国研究所招聘研究員
1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。
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【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】
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