2014年4月19日土曜日

中国の不安(5)=李鵬元首相系電力財閥が次の標的!ますます権力化する習近平

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ロイター 2014年 04月 19日 08:54 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYEA3H07820140418?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0

汚職高官追放に「聖域」なし、中国主席が腹心登用で権力固め

[北京 17日 ロイター] -
中国の習近平国家主席は、汚職の疑いのある高官を追放し、
息のかかった人材や改革志向の官僚を共産党の要職に付けようとしている。
政府や軍の関係者が明らかにした。

複数の関係筋によると、習氏は汚職高官を排除することで、権力基盤を固めるとともに、一党支配の継続に不可欠だとする経済・司法・軍事改革が実現できると考えている。

習氏の計画は広範囲にわたり、
 浙江省出身で進歩的な考えを持つ約200人を上級職に昇進させる計画
だという。
浙江省は、習氏が2002年から2007年まで党委員会書記を務めた場所だ。

関係者の1人は
汚職撲滅運動は目的を達成するための手段だ。
その目的は、改革を推し進めるため、腹心や志を同じくする者たちを要職に昇進させること」
と話した。

汚職撲滅を目指す習氏は、最高指導部の元メンバー周永康・前共産党政治局常務委員に対する調査を指示。周氏をめぐる疑惑は、過去60年で最大の汚職スキャンダルだとされている。

ロイターは3月30日、
周氏の親族や側近、部下ら300人以上が昨年末から拘束されたり、調査を受けたりしたと報道。
中国政府は周氏に関するコメントは一切出していない。

今年に入って習氏と内々に会話を交わしたという関係者によると、改革の実行について習氏は、国営企業や党の長老、「太子党」と呼ばれる高官子弟らの反対によって「非常に難しい」とこぼしていた。
国営企業や太子党は、多くの特権を享受しており、事実上独占状態の業界もある。

司法改革については、習氏は党による司法への介入権限を縮小したものの、国民の不信を払しょくするには一段の措置が必要だと専門家はみている。

また、習氏があらゆる分野で改革を進めている一方で、人権活動家らは、大きな政治改革は習氏の念頭にはないと強調。
実際、当局は国内メディアの支配を強め、著名ブロガーらの監督を強化している。

■<浙江省から採用>

関係者によると、習氏には、自身の出身校である清華大学を卒業した改革派役人を登用する計画がある。
しかし、人材登用の鍵となる場所は浙江省だ。
同省はイデオロギー的に進歩的だとされ、民間企業の集中によって、経済改革の先頭に立つ場所とされている。

習氏の計画では、浙江省出身の役人を党や中央政府、軍の役職に就かせるのではなく、他の省に派遣するという。
関係者は、習氏の支持者である夏宝龍・浙江省党委書記が、今年か来年あたりに新疆ウイグル自治区を担当する要職に就き、2017年には党中央政治局入りを果たす可能性が高いと語る。

また、習氏の最側近の1人、鐘紹軍氏(45)も浙江省出身。
軍とつながりのある関係者によると、この鐘氏が中国人民解放軍でさらなる昇進を果たすとみられるという。

2012年11月に党のトップになり、翌13年3月に国家主席に就任した習氏は、汚職は党の存亡にかかわる脅威になると警告してきた。

習政権に近い関係筋は、この警告を受け、党や政府、軍幹部らは戦々恐々としていると話す。
周氏の汚職疑惑では、調査の一環として副大臣クラス約10人も対象になっているという。

対象者には、国有の中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)や、その親会社である中国石油天然気集団(CNPC)の元幹部もいる。
彼らは、周氏が石油業界にいた際につながりがあったとされている。

関係者の話では、昨年行われた党の内部調査では、
党や政府、軍幹部の3割以上が何らかの形で汚職に関与していた
ことが判明。
これは、習氏の汚職撲滅運動の成果が表れているとも言える。

汚職摘発に関し、関係者は党の重鎮らからの抵抗はあまりないと指摘。
ただ、追放する人数には限界があるとし、
「すべての汚職役人を摘発すれば政権がまひしてしまう」
と述べた。

■<軍にも調査のメス>

汚職摘発の動きが広がる中、230万人が所属する人民解放軍にも調査のメスが入った。

中国国営の新華社は31日、人民解放軍の谷俊山・元総後勤部副部長が汚職や収賄、公金流用、職権乱用の罪で軍事法廷に起訴されたと報じた。

関係者によると、中央軍事委員会副主席と共産党政治局委員を2012─13年に退任した徐才厚氏(70)が自宅軟禁状態にあり、谷氏に対する調査に協力している。

徐氏は谷氏が昇格する上で強力な後ろ盾となった1人で、谷氏が犯したとされる行為に目をつぶったり、少なくとも報告を怠ったりしたとされる。

習氏の指示により、人民解放軍は軍専用のナンバープレートの違法使用、軍官舎への違法入居、地位を売る行為の取り締まりを実施。
関係者の話では、それでも習氏は、地位を買った兵士ら全員を罰することはせず、さらなる改革に同意させるための手段として利用する方針だという。

習氏は、周氏や徐氏を起訴するかについては、結論を下していない。

香港科技大学のデビッド・ツバイク氏は、
「習氏が周氏のような人物を失脚させることができれば、ほぼすべての人に同様の措置を取ることが可能だということを示す」
とコメントした。

習氏が周氏の調査を指示した理由について関係者らは、失脚した薄熙来・元重慶市共産党委員会書記の影響力を根絶させたいとの思いがあると語る。
薄氏は収賄などの罪で無期懲役が確定し、服役している。

周氏は、その薄氏の追放に反対していた。
シンガポール国立大学の薄智躍氏は、
反汚職キャンペーンは行き過ぎだと党の長老らが判断すれば彼らから反発が起こる可能性がある
と指摘。
習氏にとっての課題は、自分の安全を確保しながら、すべてのキャンペーンを成し遂げることだ」
と語った。

(Benjamin Kang Lim記者 Megha Rajagopalan記者、翻訳:野村宏之、編集:宮井伸明)



ここで「改革」を「独裁」に置き換えると筋が通りやすい。
毛沢東のときでもそうであったが、
 「改革」というのは一党政治では独裁の裏の顔
である
汚職撲滅」というのは非常に通りやすい名目である。
これが進行すればするほど、習近平の権力が増強され、独裁への階段が上がりやすくなる。
既存の権力機構と習近平の独裁志向がこれからどんどんぶつかりあっていく。
成長期にはともに益を得たものが、衰退期には誰が生き残るかになってくる。
「改革」はキレイ事のタイトルだが、「独裁」はダークである。
一党政治では中身はどちらも同じなのだから始末におえない。
「言葉のマジック」に騙される。
中国は言葉の国だから文化的ではある。


サーチナニュース 2014-04-22 14:15
http://news.searchina.net/id/1530475

党員幹部4万2000人超を処分・戒告―習近平版「八項」違反で

中国共産党中央紀律委員会の李玉賦副書記は22日、習近平総書記(国家主席)が2012年12月に発表した、党員として順守すべき「八項規定」の精神に違反したとして、2014年3月末までに4万2000人以上を処分・戒告の対象にしたと述べた。
中国新聞社が報じた。

「八項規定」は
1].「群集の意見を聞く」、
2].「視察時には形式主義を避ける。同行者も減らし、接待も簡素化する。歓迎のための群衆動員や飾り付けをしない」、
3].「会議は効率向上に努める」、
4].「報告書は簡潔に。実質を伴わぬ報告書は作らない」、
5].「海外出張時、交通機関利用についての規則を順守する。通常は出迎えに現地滞在中国人を動員しない」、
6].「警備は簡素に」、
7].「報道は価値のあるものに絞る」、
8].「個人的な書籍出版はしない」、
9].「倹約節約をする。住居や車両の配分、生活待遇の規則を守る」
などから成り立つ。

中国共産党の創設期だった1928年、毛沢東は「三大紀律、六項注意」を中国工農紅軍(中国人民解放軍の前身)の軍規として採用。
同軍規は後に、「三大紀律、八項注意」として定着した。
中国人にとって「三大紀律、八項注意」は知らぬ者はないと言ってよい軍規だ。
 習近平総書記も「三大紀律、八項注意」を意識して、
自らの「八項規定」を打ち出した

と考えられる
李副書記によると、「八項規定」が発表してから約1年3か月後の2014年3月末までに、党員幹部4万2000人以上が処分・戒告の対象になった。
うち1万人以上が処分され、3万2000人以上が、戒告や教育の対象になったという。
中国語では物事のやりかた、進め方を「作風(ヅオフォン)」と言う。
李副書記は、「八項規定」の精神にもとづき、「形式主義」、「官僚主義」、「享楽主義」、「贅沢(ぜいたく)主義」という、悪しき「作風」である「四風(スーフォン)」の問題の撲滅を全国各地で群衆路線の教育と実践により、集中的に取り組んできたと説明。
検査と是正の実効力も強め、新たな展開を得たと説明した。
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 ◆解説◆
  習政権の「八項規定」は、社会で指導的な立場にある共産党員に対して、民衆から乖離(かいり)することのない発想や振る舞いを求めている。
ただし、報道統制や党員の自由な発言を封じる部分もあることから、
「どこからも非難される余地がなく、批判されたとしてもきちんと説明・反論のできる理想的な党づくり」
というよりも、
共産党の声望と威信を保つ」ことを第一義にしたと理解できる。
「党の理想」を追求するまでの余裕はなく、
「とにかく、党批判の原因を取り除く」を当面の目標とせざるをえなかったとも解釈できる。
習近平政権が打ち出した「八項規定」は本文部分の文字数が621文字で、
毛沢東の「三大紀律、八項注意」の73文字よりも、相当に長い。
(句点を含む。 やや異なるバージョンあり)。

毛沢東は、
「兵士は民間人の所有物を略奪して当たり前」
という中国古来の軍の風潮では、人民に支持される革命は不可能と考えた。
簡単で短い軍規にしたのは、文字が満足に読めない兵士も多かったからだ。
内容は三大紀律
●.「一切の行動は指揮に従う」、
●.「民衆の物は針1本、糸1筋も取るな」、
●.「捕獲したものはすべて公のものとする」
八項注意
 「はなしかたはおだやかに」、
 「売買は公平に」、
 「借りたものは返す」、
 「壊したものは弁償する」、
 「人をなぐるな、罵るな」、
 「家や農地を荒らすな」、
 「女性をからかうな」、
 「捕虜を虐待するな」
だ。
毛沢東が教育した共産軍は、「三大紀律、八項注意」を暗唱させ、徹底させるなどで民衆、特に貧しい農民らの信頼を勝ち取ることができたとされる。
習近平総書記の「八項規定」の文字数が増えたは、毛沢東当時よりも極めて複雑になった社会で社会的な地位を得た党員幹部の行動を規制しようとすれば、「あれもするな。これもするな」となり、どのように簡略化ても禁止事項を多く盛り込まざるをえなかったからと考えられる。



レコードチャイナ 配信日時:2014年5月5日 18時31分 Share (facebook)      
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<書評>「腐敗撲滅」に賭ける習近平の執念、その理由は?
 ―遠藤誉著『中国人が選んだワースト中国人番付』


●ネット上にアップされ広まった「クズ(ワースト)中国人番付」。本書は「庶民の怒りと心情が反映されている」という、この番付に登場した人々に焦点を当てながら、中国の構造的腐敗の実態と課題に大胆に斬り込んでいる。

 中国はインターネット人口6億5千万人と世界一のWeb大国である。
 13年元日、ネット上にアップされいったん削除されたものの転載され一気に広まった「クズ(ワースト)中国人番付」。
 本書は「庶民の怒りと心情が反映されている」という、この番付に登場した人々に焦点を当てながら、中国の構造的腐敗の実態と課題に大胆に斬り込んでいる。 

 もっとも、ネット庶民が選んだ「クズ中国人番付」の中には、日本でよく名前が知られている大物は少ない。
 1位に輝いたのは、ネット通販サービス大手・アリババの創設者・馬雲。
 1989年の天安門事件の武力鎮圧を正当化したのが不評を買った。
 2位は石油利権のトップ、周永康。
 胡錦濤時代に常務委員を務めていた大物である。
 元国家主席で保守派のドン、江沢民にも近いとされる。
 3位に入ったのが元首相・李鵬の娘である李小琳。
 5大電力会社を牛耳り、一流デザイナーに作らせたファッションで身を包み、贅沢の限りを尽くしていることが嫌われた。
 このほか本書には多くの「クズ人間」が登場し、権力構築プロセス、権力獲得と出世のための闘争・権謀術数・閨閥、歴史構造的腐敗の実態が臨場感ある筆致で綴られている。

 著者は「虎もハエも同時にたたく」をスローガンとする習近平国家主席の“腐敗撲滅運動”を
 「毛沢東回帰」と評し、大物・周永康をターゲットにした“虎退治”についても「外堀を埋められた」と解説する。 

 習近平の手法について「毛沢東の力を借り、それを保護神として腐敗に切り込んでいこうとしている」というのが著者の見立てである。
 さらに
 「そうでなければ党が滅び国が亡ぶ。
 清王朝も腐敗によって最後は滅んだ」
と指摘。
 習政権は大きな危機感を抱き「腐敗撲滅」に並々ならぬ力を注いでいるという。 

 日本と中国は2012年の尖閣諸島国有化と反日デモを経て、かつてないほど関係が悪化した。
 ところが、昨年9月の尖閣国有化1周年、満州事変記念日や13年暮れの靖国参拝でも反日デモは起きなかった。
 「いや、習近平政権は反日デモを起こせなかったのだ」
と著者は指摘する。
 習近平政権は反日デモを抑制しているのではなく、反日デモを許したら習政権への怒りに転化されかねないことを懸念している、というのだ。 

 習政権は「党員の腐敗」を何よりも恐れた毛沢東から学ぼうとしているが、毛沢東回帰は「言論弾圧」という負の側面を伴うと指摘。
 その実態解明にも紙幅をさいている。
 人権制限、権力集中という中央集権的統治機構と権力闘争、その歴史構造的腐敗の実態など、興味深いトピックスも散りばめられている。 

◆5大権力を掌握、抜本改革待ったなし 

 本書によると、胡錦濤前国家主席は融和改革路線を目指したが、江沢民を頂点とする保守既得権益派の抵抗で大きな成果を上げられなかった。
 これを継いだ習近平政権も国家の改革と再生、腐敗撲滅を推進しようとしている。
 習近平の唱える“虎とハエ”退治も、実質的には自己の権力基盤の確立につながっており、党総書記、中央軍事委員会主席、国家主席に、新設の「中央全面深化改革領導小組」「国家安全委員会」のトップを加え含め5大権力を掌握した。 

 著者は建国以来、毛沢東が進めてきた計画経済に基づく社会主義国家体制と、改革開放以来の「特色ある社会主義国家」体制との間の矛盾が限界に近づきつつあると分析。
 権力を掌握した習近平はこの課題に正視し、「腐敗」だけでなく「経済、政治、文化、社会、環境、党制度」などの抜本改革に取り組もうとしているという。 

 著者は旧満洲の中国吉林省生まれ。国共内戦の惨禍で家族を失った筆舌しがたい経験を持っており、53年、やっと帰国でき、苦学した後、筑波大学教授や中国社会科学院客員教授も務めた。
 その情報の確度の高さ、分析力には定評があり、本書も例外ではない。(評・八牧浩行) 
<小学館新書、税抜740円>


 エラク習近平を持ち上げているが、とてもそんな理屈で納得できるとは思えない。
 単純に言えば腐敗で清朝が滅びたことを教訓にしているというが、果たしてそうだろうか。
 もしそうなら、なにも反日をかくも強く主張する必要などどこにもないはずだろうに。
 単に、習近平一派が権力を握りたがっているとしか見えないのだが。


レコードチャイナ 配信日時:2014年4月22日 6時30分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=86874&type=0

次のターゲットは李鵬元首相系列
――「石油閥」から「電力閥」に進む中国の虎退治


●4月17日、中共中央紀律検査委員会は、華潤集団の宋林董事長の取り調べを正式に始めたことを公表した。約1000憶円の汚職の嫌疑がかかっている。宋林は、李鵬元首相の息子で山西省の副書記をしている李小鵬と非常に仲が良い。写真は宋林。

◆「電力閥」利益集団と化している李鵬ファミリー

4月17日、中共中央紀律検査委員会は、華潤(ホァルェン)集団の宋林董事長の取り調べを正式に始めたことを公表した。
 約1000憶円の汚職の嫌疑がかかっている。

 宋林(1963年生まれ)は、李鵬元首相の息子で山西省の副書記をしている李小鵬(1959年生まれ)と非常に仲が良い。
 李鵬は文革終息後に胡耀邦元総書記の温情により、電力部部長(大臣)に抜擢され、のちに国務院総理になった人物である。
 前回のコラムでも述べたように、李鵬は大恩人の胡耀邦を裏切り、天安門事件を招いたことで有名だ。
 一方、電力部長に就任したことを皮切りに、中国の電力界を一手に掌握する「李鵬ファミリー」という利益集団を形成するに至っている。

◆宋林と李鵬の息子・李小鵬とのつながり

 息子の李小鵬は父親と同じく電力畑を歩み、1991年から華能国際電力開発公司に入り込み、やがて董事長などを歴任。
 その上で、2008年からは山西省の中国共産党委員会で常務委員などを務め始めた。

 宋林は1985年から国有企業である華潤集団で活躍し始め、2001年には華潤集団の子会社・華潤電力控股有限公司(China Resources Power チャイナ・リソーシズ・パワー)(略称:華潤電力)を立ち上げ、その経営に当たってきた。
 
 ここまでの時点で、李小鵬と宋林は互いに電力界における利益を享受してきたのだが、李小鵬が山西省に移ると、華潤電力と山西柳琳聯盛能源(エネルギー源)有限公司(2002年設立)を合併させて山西華潤聯盛能源投資有限公司を設立。
 2010年になると、今度は山西華潤聯盛と中信信托および金業集団が合併して太原華潤煤業有限公司を設立した。
 太原は李小鵬が副書記を務める山西省の省都である。
 
 宋林が捕まったとなれば、当然そのパートナーである李小鵬にも火が着く。
 習近平政権は「虎(大物)もハエ(小物)も同時に叩く」というスローガンで反腐敗運動を進めているが、さすがに首相を務めたことがある「大虎(李鵬)」までは「虎退治」が及ばないだろう。
 それでも「中虎(李小鵬)」までは斬りこめなかった。

◆電力界を牛耳る李鵬の娘・李小琳

 もう一人、斬りこまれるであろう「電力閥」の「中虎の上」がいる。
 それは李鵬の娘の李小琳(1961年生まれ)だ。
 彼女は中国電力国際公司、中国電力投資公司、中国電力新能源(新エネルギー源)発展有限公司、中国電力発展有限公司など、中国の電力企業のほとんどを独占し、中国の電力提供の80%ほどを一手に掌握している。
 
 2011年に発表された「アジアで最も影響力を持っている25のビジネス界リーダー」では21位にランクインし、中国では唯一の女性企業家として名を馳せた。
 李小琳は美貌と美しいスタイルを保ち、常にゴージャスな装飾品を身に着けていることでも有名。 「電力女王」という綽名もある。
 兄の李小鵬よりもやり手だ。

 ところが、この李小琳、他のランキングでも3位を獲得している。
 それは2014年1月1日に中国のネットに出現した「2013年度 中国人クズ番付」だ。
 6.1億人に及ぶ中国の網民(ネット市民=ネットユーザー)は、なかなかに見る目がある。
 2013年1月1日に初めてネットに現れた「2012年度 中国人クズ番付」の第1位は薄熙来だった。
 彼は昨年9月に無期懲役の刑を受けた。
 今年は周永康が2位で、すでに捕まったも同然の状況にある。
 2年連続で、中国人自らが選んだ「クズ人間」は的中している。
 (詳細は拙著『中国人が選んだワースト中国人番付――やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』)

 この李小琳の足元にもすでに火が着いている。
 本年3月26日、中国長江三峡集団公司の董事長で同公司中国共産党委員会書記であった曹広晶と、総経理だった陳飛が罷免された。
 董事長兼党委員会書記と総経理が、二人同時に異動になることは一般にはない。
 したがって、よほど政治的に緊迫した背景があったと考えなければならない。
 この二人は李鵬の腹心である。
 李鵬は1928年生まれですでに病身。
 その意味でも李鵬には手出ししないが、その子女たちには「虎狩り」の網が迫っていることになろう。

 中国長江三峡集団公司は世界最大の水力発電ダムで、中国の電力界の柱の一つである。
 習近平政権の「虎退治」はどうやら「石油閥」や「政法閥(公安閥)」といった周永康周辺から「電力閥」に移ったようだ。
ということは周永康周辺の虎狩りはほとんど終了し、一段落を迎えたことを意味する。後は司法に回され、その告白から周永康をがんじがらめにしていくだけとなっている。

<遠藤誉が斬る>第31回)

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子(チャーズ)―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』など多数。 



 WEDGE Infinity   2014年05月01日(Thu)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3818?page=1

中国電力業界を牛耳る「赤い貴族」に汚職取締りが及ぶ?
「太子党ビジネス」カラクリ暴露

ボアオ・アジアフォーラムが4月8日から11日まで中国南部の島、海南省のボアオで開催された。
習近平国家主席も出席した昨年ほどではなかったものの、李克強総理をはじめオーストラリア、韓国、ラオス、東チモール、ミャンマーなどから首相、議会議長など(日本からは福田康夫元首相が参加)が出席して大々的に行われた。


●フォーラムの分科会で発言する李小琳女史

しかし、今回取り上げるのは政府首脳が参加した本会議ではなく、分科会に参加してその一挙手一投足に注目が集まった一人の財界セレブについてである。
 「赤い貴族」(中国では「紅二代」と呼ばれる)としての「太子党」の代表格、李鵬元首相の娘、李小琳女史だ。
彼女は分科会に出席し、再生可能エネルギーについて見解を披露した。

彼女に対して中国内外のメディアはセレブ・ファッション(派手なブランドの衣服に身を包んだ彼女の動向)に注目していたが、今回の関心事はこれまでとは全く違ったところにあった。
それは少し前に香港の雑誌で報道された、まさにその土地、海南省ボアオの土地取引を巡る疑惑である。このスクープ記事によって汚職の取締りが電力業界を牛耳る李鵬一族に及ぶのではないかという憶測が生じたのだ。

■中国のエネルギー産業で隠然たる影響力をもつ

李小琳女史は1961年生まれで、父親の李鵬氏は1988年から98年まで10年にわたって首相を務めた。
首相時代には三峡ダム建設にイニシアチブを持ち政権での建設賛成派をリードし、建設にこぎ着け、その後はプロジェクトの権限を一手に握った。
李女史は現在、中国電力国際発展有限公司(以下、中電国際と略称)の董事長(代表取締役)で中国電力新能源発展有限公司(以下、中電新能源と略称)の董事長も兼任する。

中電国際は、中国に5つある電力会社の一つ中国電力投資集団の子会社(孫会社といわれる)で李女史はここの副総経理でもある。
つまり中国電力の重役兼香港支社長のような立場だ。
政府でも全国政協委員(参議院議員のような立場)を務めいろいろな提案を行い、中国のエネルギー産業で隠然たる影響力を持っている。
李女史はフォーラムでも新しいエネルギー開発についての見解を披露した。

■周永康の子分だった冀文林も更迭される

ここで紹介したいのは香港で発行されている週刊誌『亜洲週刊』による「李鵬の娘 政経機密」という特集の「李鵬の娘 李小琳による海南100億超の土地認可内情」という記事である。
この記事を取り上げたのにはいくつかのポイントがある。


●香港誌の表面を飾る李鵬一族及び李小琳女史。華僑界での李小琳女史の注目度は抜群だ

★.一つは習近平政権における汚職取締りが進められるなかで、
取締りの重点がこれまでの石油業界から電力業界にも波及する様相を呈しており、
その中で最も注目を浴びるのが李小琳女史だという点である。
中国の指導部トップ9だった周永康の去就が注目される中で周の子分だった海南省の冀文林副省長が更迭されたことも憶測に拍車をかけた。
記事は冀副省長が土地割譲に便宜を与える経緯が報道されている。
この記事はスクープとして国内外メディアにフォローされ、ボアオ・フォーラムの際にはマスコミが殺到した。

★.もう一つのポイントは記事では中国の指導者、
元指導者の子弟「太子党」たちがその権力を使ってビジネスを展開し、金儲けを行うメカニズムが明快にレポートされている点だ
国有資産を私企業に割譲するプロセスで「太子党」が果たす役割やビジネスのカラクリを暴露したのだ。

* * *

記事【2014年3月9日号『亜洲週刊』(香港)(抄訳)】

中国の李鵬・前首相の娘、中国電力業界の女傑、李小琳女史が最近、華麗な転身を遂げ、不動産業界に参入した。
彼女が役員(董事)を務める香港緑色健康発展有限公司が昨年(2013年)11月に海南省の発展改革委員会(経済政策を策定する部門:筆者)からボアオの5つの土地(価値は100億元超〔約1600億円:筆者〕)を医療センター建設等のプロジェクトに使う認可を受けたのだ。
認可したのは、長年にわたり周永康の秘書を務めた海南省の冀文林副省長だった。
しかし、中電新能源はこの土地獲得を公表していない。

党中央規律委員会のホームページは海南省の冀文林副省長(県副知事に相当:筆者)が規律違反容疑で捜査を受けていると発表した。
党中央政治局常務委員だった周永康の秘書や関係者が次々に捕まる中で、周の腹心だった冀は昨年末に友人に「最近、動悸がする。恐怖を感じる」と漏らしていた。
捕まるのは時間の問題だったのだ。
冀副省長の更迭が習近平による「虎退治」と関係することは疑問の余地がない。

冀文林は2013年1月に海南省副省長に就任し、その後、ボアオ・プロジェクト責任者となり、大きな動きを見せた。
1年も経たずに1000畝〔ムー〕(合計約67ヘクタール〔東京ドーム約16個分〕:筆者)近くの土地を私企業に割譲することを承認したのだ。
この私企業の出資元は李小琳女史が役員を務める香港の会社だった。
中国の電力業界で活躍してきた李女史が海南の不動産業に参入し、登記額わずか1万香港ドル(約1280ドル)の小さな会社が巨額な土地資産を動かすことになったのだ。

海南省政府の海南省発展改革委員会(開発担当部局:筆者)ページには昨年11月に同委員会が認可した「ボアオ娯楽城国際養老・養護模範地区プロジェクトの認可採択」、「同城国際リハビリ療養センタープロジェクト採択」などの文書が掲載されている。
事務局に問い合わせたところ、担当者は、「海南緑健生態都市開発有限公司」への認可を明かした。
同社の出資元は香港の「緑色健康発展有限公司」だった。
同社の実態について担当者は審査するだけで詳細は不明と回答した。

■香港人でありながら、党員でもある

中国の電力業界で「姉御」と称される李小琳女史。
香港の「紅籌株」(中国政府系の背景を持つ香港市場で上場された株式:筆者)上場企業では唯一の女性CEOであり、100億ドル近くの価値を有す中国電力(北京)を率いる。
李女史は北京が海外に派遣した幹部であり、国有企業の高官であり、その資産は国有だ。
彼女は大型中央企業(エネルギー、軍需など国の基幹産業は国有であり、その中心的な企業113社が中央企業と称され、国有資産監督管理委員会〔省庁〕の管理下にある:筆者)の幹部であると同時に私企業の役員でもあるわけだ。
中国国内に身分を持つと同時に香港の永住権も持つ。
 香港人でありながら、党員でもある。

李女史は香港の私企業の役員として海南省の土地開発に目標を定め、外資の身分で海南省に投資会社を登録したというわけだ。
同社はわずか3カ月で海南省から5つの土地プロジェクトの認可を受けたのだ。
資本たった1万香港ドルの企業が、百億元(約16億ドル)を超える土地を動かし、派手な開発劇を繰り広げようとしている。
ちなみに「緑色健康発展開発」社は彼女が采配を振るう「赤い上場企業」中電新能源が入る華潤ビル敷地内にある。

理解に苦しむのは国有資産のプロジェクトの土地獲得で私企業が参入していることだ。
国有企業が香港で上場する中電国際と中電新能源のトップである李小琳女史は、国有企業である中国電力投資集団公司の常務副総経理でもあり、党中央組織部が管理する官僚でもある。
香港の永住権も、帰郷証も保有している。
しかし、国内の大型中央企業の高官で党組織メンバーなら本来、香港永住権の保有は許されていないはずだ。
李女史は政府高官の身分と私人の身分を持って香港と中国の間でビジネスの海を自由に泳ぎ回っている。

海南省(島)は中国の5つの経済特区(深圳、珠海、汕頭、厦門、海南:筆者)のうち面積では最大だ。
しかし、開発は停滞し2009年の一人当たりのGDPは2800ドル超と全国で中の下レベルだ。
ただ美しいビーチ、新鮮な空気が多くの観光客を引きつけてきた。
国連世界観光機関(UNWTO)と海南省政府は共同で「海南省観光発展総体計画」を策定したが、それには2020年までに同省にアジアで一流の国際的なリゾート地を作る計画が記されている。国務院も2009年に海南国際観光島構想を打ち出し、医療と観光が融合した国際競争力のある景勝地を作ろうとしている。


●『亜洲週刊』誌の特集記事

中国では土地を調達するということはすなわち富を手に入れるも同然であり、李女史は1年もせずに広大な土地を手に入れた。
彼女はかつてこうに述べていた。
「私の成長は自分の一歩一歩の努力の成果によるものです。
…能力以外の資本はゼロに等しいのです」
と。
確かにその通りだ。海南ボアオ娯楽城プロジェクトの用地で李女史の成功は資本投資によるものではなかった。
上層部からの青信号で道を開けさせただけだから。

* * *

【解説】

李女史はさっそく反撃した。
インタビューに答え、不動産業に進出したこともなければこれからもない、と反論した。
憶測には「法的手段」を取る可能性さえ示した。
香港の報道機関は李鵬一族が緊急家族会議を開いたと報道した。
記事は彼らの急所を突いたといえるかもしれない。
この記事は政府高官の子弟が権益を背景にビジネスに乗り出す様子を克明に記述しており、記事に中国国内を含む多くのメディアも追従した。
習政権の汚職取締りでは更迭された閣僚、高官は既に20人を超え、石油業界を中心に力が入れられてきたが、このレポートが出てからにわかに電力業界にその矛先が向くのではないかと関心を呼ぶようになっている。

李鵬首相の牙城であった三峡ダムの建設、管理を管轄する国有大型企業(国有「中央企業」の一つでもある)である長江三峡集団に対して党の中央規律検査委員会の巡視グループが入り査察を行った。
そのプロセスでトップ2人が職を辞したことからいよいよ「虎退治」が三峡ダム関連や電力業界に向くのではないかとマスコミが色めきたった(ただ少ししてから曹広晶董事長は湖北省副省長に、陳飛総経理は政府の三峡工程建設委員会事務局副主任に就任したことからマスコミの勇み足かもしれない)。
そして李鵬元首相一族では李小琳女史だけではなく、元首相の息子、李小鵬〔山西省省長〕氏も注目を浴びている。

しかし、ここで私見を述べれば、習政権が展開してきた「虎、ハエ退治」が華僑メディアで騒がれるように李鵬一族にまで手が及ぶとは信じがたい。
汚職取締りを元首相というナンバー2経験者まで含めるとほとんどの高官がひっかかり、
 その結果、権力闘争が激化し、政権が揺らぎかねないためだ。

とはいえこれまでタブーであった中国政府内部の汚職が海外華僑メディアに触発され、中国国内でも変化球のような報道が出るようになったのは薄煕来事件以降の新しい傾向だろう。
紹介した『亜洲週刊』は香港誌だが、中国国内にも骨のある記者はいる。
政治改革が掛け声だけで終わらないためにも、「第四の権力」としての役割を発揮すべくマスコミには頑張ってほしいものだ。

弓野正宏(ゆみの・まさひろ) 早稲田大学現代中国研究所招聘研究員
1972年生まれ。北京大学大学院修士課程修了、中国社会科学院アメリカ研究所博士課程中退、早稲田大学大学院博士後期課程単位取得退学。早稲田大学現代中国研究所助手、同客員講師を経て同招聘研究員。専門は現代中国政治。中国の国防体制を中心とした論文あり。



サーチナニュース 2014-05-26 12:13
http://news.searchina.net/id/1533305

電力建設元副社長を取り調べ
・・・汚職容疑、「最終標的は元首相一族」との見方も

中国共産党紀律検査委員会と中国政府・監察部は26日、同政府・国有資産監督管理委員会(国資委紀律委員会が中国電力建設集団有限公司の黄保東副総経理(副社長)を「紀律と法律に対する厳重な違反の疑い」により、調査をしていると発表した。
中国政府はこのところ、電力分野に対する不正の摘発に力を入れている。
そのため、政界における「電力閥」の代表とされた李鵬元首相一族が「最終標的」との見方も出ている。
中国電力建設集団は2011年設立の国有独資会社。
水力発電の設計、施工、関連事業への融資などを扱っている。
資産総額は3474億元で職員数は20万人。
2013年の売上高は2257億元で、利益は90億元という。

  党紀律検査委員会と政府・監察部によると、黄元総経理は「職務上の権限で他人のために利益を図り、巨額の賄賂を受け取った」としている。
すでに、黄元総経理の党籍剥奪と公職からのも決めた。
中国では李鵬元首相(在任:1988-1998年)が「電力閥」の代表とされる。
李鵬元首相はモスクワ科学動力学院で水力発電を学び、帰国後に電力部門に勤務した後に政界入りし、電力工業部部長(閣僚)などを歴任した。
家族にも電力関係者が多い。

  息子の李小鵬は電力会社の華能集団などを経て政界入りし、現在は山西省省長。
娘の李小琳は中国句電力国際発展有限公司、中国電力新能源発展有限公司の董事長(会長)などを務めている。
次男の李小勇は1998年、シンガポールに移った。
1998年に発生した汚職事件に関与しており「難を避けるため」との見方がある。
同事件では有罪判決で死刑を執行された被告もいた。

  中国では、石油分野関係者の「紀律違反による調査、立件」が相次いだが、「最終標的」は2007年秋から12年秋まで、中国の最高指導陣とされる共産党中央政治局常務委員を務めた周永康氏とされている。
周氏は2013年12月以降、公の場から姿を消した。
電力分野については、「李鵬元首相の一族が最終的な標的」との見方が出ている。
李鵬元首相には、国内の反対を押し切って三峡ダムの着工を強行することで「電力関係者が多い一族の利益をはかった」などと、黒いうわさがある。




【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】



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