2014年5月20日火曜日

アジアのトラブルメーカー中国(29):南シナ海問題は尖閣より複雑=「米国のアジア戦略が対立を後押し」

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レコードチャイナ 配信日時:2014年5月20日 7時30分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=88272&type=0

南シナ海問題は尖閣より複雑=復旦大教授「米国のアジア戦略が対立を後押し」―香港メディア


●18日、香港・中評社によると、復旦大学米国研究センターの呉心伯主任は先日、米シンクタンク「アジア・ソサエティ」の開催した電話会議上で、南シナ海での中越対立事件についてコメントした。写真は反中デモで破壊された中国企業。

 2014年5月18日、香港・中評社によると、復旦大学米国研究センターの呉心伯(ウー・シンボー)主任は先日、米シンクタンク「アジア・ソサエティ」の開催した電話会議上で、南シナ海での中越対立事件について以下のように述べた。

 「釣魚島(尖閣諸島)問題はそれほど心配しなくてもいい。
 オバマ大統領はアジア訪問時にこの島が日米安保条約の適用対象であると明言したが、これは新たな政策というわけではない。
 日本に対しては中国と話し合い、挑発的行動をやめるよう要求している。
 安倍首相に対しては、米国は中日の衝突を望まないというボトムラインを伝えているはずだ」

 呉氏によると、南シナ海情勢は尖閣問題よりも複雑だという。
 米国とフィリピンは新軍事協定を締結したが、これは米国が軍事的に南シナ海問題に介入する意図があることを示している。
 これによってフィリピン、ベトナムは中国との対立を後押しされ、さらに対抗的な姿勢を見せるようになった。
 オバマ大統領のアジア歴訪後、南シナ海に起こった目に見える変化だ。

 呉氏は、これまで中国は南シナ海の領土に関し、実力の不足から口だけの主張をしてきたが、
 条件が整った今は以前よりも積極的に主張することができるようになったと述べた。
 一方、フィリピンとベトナムは米国のリバランス政策を受け、積極的に中国に対抗し、主張するようになった。
 米国の立場の変化によって、南シナ海問題は複雑さを増している。

 呉氏は、
 「米国は主権問題でどちらかの味方はしないが、事実上はフィリピン側に立っている。
 南シナ海での軍事行動によって、軍事的主導権を保持したいのだろう。
 南シナ海情勢は、摩擦、衝突の可能性が排除できない」
と述べ、
 「南シナ海問題は数十年にわたって続く中国と隣国の紛争であり、アメリカのアジア太平洋政策は最近になってこれを取り上げるようになった。
 米国は南シナ海問題をアジア太平洋リバランスの枠組みの下で語るべきではない」
と語った。


 論説で「条件が整った今」中国は積極的に主張するようになった、という。
 その条件とは何かについては述べていない。
 中国が南シナ海で強く出るようになったのは
1].尖閣問題での失敗による中国の心のウサを晴らそうとする弱い者イジメの心理
だが、逆にみるとASEANが中国に強く出るようになったのは、
2].尖閣問題で明確に中国の対峙者になった日本が積極的にASEANの援護に回っているということによるASEAN諸国の孤立してはいないという心理
3].東シナ海防空識別圏問題で発生した「オバマの裏切り」で株を落としたアメリカが、その回復を狙って動き出していること
だろう。
 だが、
 中国は絶対に引かない、
そう思うのが適切。
 なぜなら、
 尖閣に続いて南シナ海でも失敗という屈辱
は大中華を標榜する中国には耐え切れないだろうから。
 よって複雑さは尖閣の比ではない。
 ASEANがキバを向けばその時点で「中国の夢」は消える。
 もし、中国がそれを完遂する方向で動くことをヤメなければ中国とASEANは必然ぶつかることになる。
 そこで中国としてはASEANを親中国組と反中国組とに別ける分断作戦を行うことになる。
 とすれば、
 「アジアのトラブルメーカー中国
として面目躍如となる。
 尖閣は結末が出るのに2年かかった。
 南シナ海は向こう10年の課題になるように思える。


ウォールストリートジャーナル 2014 年 5 月 20 日 18:51 JST
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702303923004579573474173530800?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesThird

南シナ海問題で、米中が言っていないこと
By Ying Ma


●南シナ海の中国とベトナムが領有権を争う海域を航行する中国海上保安機関の艦船 Associated Press

 中国が南シナ海でますます自己主張しているにもかかわらず、米国は、中国を封じ込めようとするつもりはないと述べている。
 同時に、中国は「平和的台頭」にしっかりコミットしていると主張し続けている。
 双方とも、そう装っているだけなのか。

 答えは複雑だ。
 「イエス」と考える向きもあるし、米中双方とも互いの利益を守るため「ヘッジ(つなぎ)」をして、公然たる対決を回避しようとしている、との主張もある。

 米国は、中国封じ込めが米国の目標ではないとはっきり明言している。
 オバマ米大統領は先月のアジア歴訪で、「われわれは中国封じ込めに関心がない」と述べた。
 この発言は驚きではない。
 封じ込めを米国の公式な戦略と認識すれば、北京から怒りの反応を引き起こし、重要な分野で中国の対米協力を減じ、双方の対立を激化させるだろう。

 だが、北京には納得できない理由がある。
 オバマ政権第1期に発表されたアジアに軸足を移すという方針が、この地域における中国の経済支配に風穴を開けようと意図しているのは明らかだ。
 最も注目されるのは、オバマ政権が環太平洋連携協定(TPP)交渉の進展に懸命になっていることだ。
 TPPは12カ国の協定で、中国を排除しているが、米国の同盟国、とりわけ中国最大のライバルである日本を含んでいる。
 米軍はまた、部隊をアジア太平洋地域にシフトする計画で、2020年までに米海軍力の60%を太平洋に配備すると発表した。

 一方、先月のメディア報道によれば、米太平洋司令部はアジア海域の紛争水域での中国による将来の挑発行為に対し、どのように強制対応するか選択肢を準備したという。
 こうした選択肢には、中国本土近くでのB2爆撃機の示威的な飛行から、中国の沿岸水域近くでの空母演習まで、さまざまある。

 加えて、米軍はオーストラリアのダーウィンに海兵隊を配備する。
 またフィリピンに米軍部隊を戻す一方、日本との確固たる軍事協力に関与する。
 そしてベトナムとの関係緊密化を模索している。

 ワシントンは、中国封じ込めの努力を否定するかもしれないが、北京は米国のアジア軸足戦略を文字通り受け止めている。

 同時に、中国は米国主導の世界秩序を脅かすことに関心がないと否定するのかもしれない。
 だが、米政策立案者、専門家、そして知識人の間では、中国のいわゆる「平和的台頭」構想はまやかしだと傾向が高まっている。

 オバマ大統領がアジア歴訪を終えて1週間も経たない時に、中国国営石油大手は南シナ海に深海用石油掘削リグを配備した。
 中国とベトナムが領有権を主張している係争水域だ。
 ベトナム当局によれば、中国はこの掘削リグの配備と同時に船舶約80隻も派遣し、ベトナム沿岸警備隊の艦船に衝突し、放水したという。

 中国は、南シナ海の島々をめぐる「紛れもない主権」を保有していると主張している。
 これに対しワシントンは、最近の出来事と、主権をめぐる最近の中国の主張について「挑発的で有害」と断じ、領有権紛争解決のためのいかなる威圧的な手段も非難するとしている。

 こうした中国の行動は、中国が強まる軍事力を躊躇なく行使して、近隣諸国を脅し、アジアでの米国の覇権に挑戦するだろうとの見方に火を付けるだけだろう。
 南シナ海における最近の乱闘以前でさえ、米共和党のリンジー・グラハム上院議員は既に、中国の態度を「鼻持ちならない」と表現し、北朝鮮への支援、米知的所有権の侵害、米国に対する数多くのサイバー攻撃を非難している。

 非難の声の中で、封じ込めの熱心な提唱者である政治学者のジョン・ミアシャイマー氏は、アジアの将来について 米国が中国との間で
 「戦争の潜在性が相当ある安全保障上の激しい競争」状態
に置かれるだろうと予言している。

 だが実際には、米中双方は潜在的に破滅的な結末の回避のため、ヘッジをしている。
 戦争を想定する一方で、可能なところで協力しているのだ。

 とどのつまり、公然たる対決は、米中双方にとって何の利益にもならない。
 おう盛な米中の経済関係は、年間貿易額約5000億ドルという実績にみられるように、二国間の相互依存の最良の指標となり続けている。
 共通の利益は他のところにも見られる。
 それは緊張を伴う国家安全保障分野も含まれる。
 例えばヘーゲル米国防長官は、4月に北京に滞在した際、米国と中国の軍部が協力すべき分野として、
●.海賊対策、
●.人道支援、
●.軍事医学、
●.海上安全
を挙げた。
 そして米国は北朝鮮けん制で中国から協力を熱心に求め続けている。

 実際のところ、現在の米中軍事協力の範囲の広さをみれば、多くの米国人は驚くかもしれない。
 米海軍作戦部長を務めたゲアリー・ラフヘッド退役大将は、米海軍と中国人民解放軍海軍が日々、海賊対策で協力しているとしばしば指摘する。
 アフリカ東岸沖合のソマリア海盆でほぼ5年間、多国籍活動の一環として行っている協力だ。

 米国がヘッジするなかで、その行動の方向(封じ込めの正式な宣言への道を含む)は中国の意図と侵略性に対する見方に大きく依存するだろう。
 もし中国が米国の威嚇と再保証(脅しとすかし)に前向きに対応しない場合には「米国の決意を疑うべきでないと言いたい」とラフヘッド氏は言う。

 中国とベトナムは厳しい対峙(たいじ)を続けている(そして他の近隣諸国とのあつれきも続いている)ものの、米国が描こうとしているような侵略者ではない、と中国は一貫して主張している。
 中国側は、太平洋には米中双方にとって十分なスペースがあると言う。
 復旦大学の沈丁立(Shen Dingli)教授(国際問題研究院副院長)は
 「中国は平和的台頭戦略から大きな恩恵を受けられる、と北京は依然みていると思う」
と指摘している。

 中国の台頭が実際にどの程度平和的になるか、その判定は現時点で下されていない。 

 <筆者のYing Ma氏は「Chinese Girl in the Ghetto(ゲットーの中の中国人少女)」の著者で、香港の公共放送局である香港電台で「China Takes Over the World(中国が世界を征服する)」の司会を務める。ツイッターは@gztoghetto >



【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】


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