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2014.03.12(水) The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40144
中国の昆明テロ事件:暗黒の日
(英エコノミスト誌 2014年3月8日号)
刃物による凄惨な襲撃は中国に衝撃を与え、同国の少数民族政策への疑問を投げかけた。
●昆明駅で起きた無差別殺傷事件の現場にろうそくを並べ、犠牲者を追悼する人々〔AFPBB News〕
「こんなことがあってはならない。とにかく、あってはならない。私には理解できない」
元鉄道運転士の男性はこうつぶやき、涙をこらえながら、昆明駅前に設置された仮設の祭壇前に立っていた。
3月1日夜、黒い服を着た襲撃者の集団が長刃のナイフや包丁を振り回し、凶悪な大量殺戮を繰り広げた現場だ。
目撃者の話では、襲撃者は無差別に人々を刺しては切りつけ、皆が必死にこの殺戮現場から走って逃げたという。
襲撃はものの数分で終わったが、被害を出さずに済むほど早く終わらなかった。
国営メディアが「中国版9.11」と呼んだ襲撃で、少なくとも29人が死亡、140人が負傷した。
■襲撃事件が昆明と中国に与えるインパクト
当局者らは、今回の襲撃事件を「新疆ウイグル自治区の過激派」が実行したテロ行為だと話している。
新疆ウイグル自治区の過激派という言葉は暗に、ウイグル民族、つまり、中国北西部出身の少数派イスラム教徒を指している。
警察によると、犯行グループのうち4人は現場で射殺され、負傷した女性1人の身柄が確保された。
警察はその2日後になって、さらに3人が拘束され、実行犯の捜索が終わったと発表した。
銃を携帯した警察と祭壇(人々は犠牲者を追悼するためにここへ来て頭を垂れ、生花や果物を供える)の存在を除けば、昆明駅は人口600万人の2級都市のにぎやかな中心地として、ほぼ普段通りの状態に戻った。
しかし、襲撃事件が昆明と中国に与えるインパクトは甚大なものになるかもしれない。
この事件は、民族間の緊張という中国を長年苦しめる問題の不穏な激化を告げる恐れがある。
1000万人を数える中国のウイグル族の大半が暮らし、北京の中央政府による高圧的な支配に苛立っている新疆では、もう何年も前から暴力的な事件が散発的に起きてきた。
ウイグル族はその文化や宗教において、中国人よりも中央アジア人に近い。
●2009年にはウルムチで、民族間の激しい暴動が生じ、200人近くが死亡した(写真は棒やシャベルを持って街頭に繰り出す漢民族の中国人ら)〔AFPBB News〕
ウイグル人の大半は、現在新疆の人口の4割を占めている漢民族の隣人たちと何とか折り合いをつけている。
しかし不満は時折、粗悪な爆発物や刃物による攻撃という形で表面化する。
2009年7月には、新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで起きた民族間の暴動で200人近くが死亡した。
ここ数カ月は、中国指導者層がウイグル人の分離主義を煽ると懸念している宗教的、文化的慣習に対する政府の締め付けが広がるなかで、治安部隊の職員に対する攻撃の件数が増えている。
中国の他地域に暴力が広がるように見えるようになったのは、つい最近のことだ。
昨年10月には北京の天安門広場で、SUV(多目的スポーツ車)が毛沢東の肖像画の前で通行人に突っ込み、5人の死者と数十人の負傷者を出した。
当局はこの事件のこともテロ攻撃と見なし、詳細がほとんど知られていない「東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)」と呼ばれるグループの犯行と断定した(東トルキスタンは1940年代に地域に存在した短命の独立国家の名前で、多くのウイグル人は中国名である新疆よりもこの名前を好む)。
天安門の車両突入事件について犯行声明を出した組織はなく、昆明の無差別殺傷事件についても犯行声明は出ていない。
自分が見たことを説明する目撃者を別にすると、三日月が描かれた黒い旗や、「東トルキスタンのテロ勢力」と関連付けられるその他の証拠が現場で見つかったという主張を含め、当局から示された事件の詳細を独自に裏付ける手段は存在しない。
■突如悪化した民族間の緊張
昆明にとっては特に、流血の事件は大きなショックだ。
というのも昆明は雲南省の省都であり、その雲南省は中国で最も多様な民族構成を持つ省の1つであるにもかかわらず、寛容さにかけて定評があり、新疆ややはり民族問題がよく起きるチベットでお馴染みの騒乱に苦しむことがほとんどなかったからだ。
昆明市内の最大のウイグル族居住区「大樹営」では、住民たちが、襲撃事件はウイグル人の未来にとって不吉だと話している。
「中国人は昔から我々を見下してきたが、耐えられる程度だった」。
新疆のカシュガル市出身で、昆明のパン屋の店主であるアブドゥルクマン・カダーさんはこう話す。
カダーさんの地元の人間がテロ事件の犯人だと考える者は誰もいないようだが、このところ、
「漢民族の態度は突然、いっそう悪くなった」
と言う。
パン屋には、平たい円形のパンの山が積み上がっている。
襲撃事件が起きてからというもの、漢民族の客が寄り付かなくなったのだという。
大樹営では警察の配備も増えた。大型のバンが大樹営付近の交差点を見張り、暴動鎮圧用にフル装備した警察が狭い路地をパトロールしている。
■漢民族の戸惑いと怒り
ほとんどの漢民族は、途方に暮れた恐怖を感じている。
昔から少数民族は教育や家族計画で優遇措置を受けていると聞かされ、中国メディアでは少数民族の文化や宗教に対する弾圧が一切報じられないなか、多くの漢民族は、なぜウイグル族がそこまで腹を立てているのか計りかねている。
一部の人は政府とともに、襲撃事件をテロと呼ぶことを渋っているように見える外国メディアの姿勢を不快に感じている。
米国の政府高官は3月3日になってようやく、中国メディアの情報に基づくと、事件は「テロ攻撃であるように見える」と述べた。
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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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サーチナニュース 配信日時:2014年3月19日 18時18分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=85193&type=0
「東トルキスタンイスラム運動」、昆明の無差別殺傷事件を支持
=新疆政策の再検討を要求―仏メディア
●18日、仏AFP通信の報道によると、「東トルキスタンイスラム運動」は動画で、昆明市で起きた無差別殺傷事件を支持した。写真は新疆ウイグル自治区ウルムチ市。
2014年3月18日、仏AFP通信の報道によると、米のテロ情報収集団体は、東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)の中国からの独立を目指すイスラム主義組織「東トルキスタンイスラム運動」が動画で、昆明市で起きた無差別殺傷事件を支持したと伝えた。
環球時報(電子版)が報道した。
今月1日、雲南省昆明市の昆明駅で無差別殺傷事件が発生し、29人が死亡、100人余りが負傷した。
同事件に関して、「東トルキスタンイスラム運動」は、中国が大きな代償を払ったとして、新疆ウイグルに関連する政策を再検討すべきだと主張。
昆明市の事件と同組織の関連性については言及しなかった。
報道によると、同組織は2013年10月に天安門前の路上で自動車が通行人に突進し、5人が死亡した事件に関しても動画を掲載。
同事件を「聖戦」と称している。
さらに同組織の指導者は、
「我々の戦士は刀やハンマーなどで戦闘しているが、近い将来銃器で中国と戦うことになるだろう」
と語っている。
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レコードチャイナ 配信日時:2014年3月19日 18時59分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=85173&type=0
「発砲もあり得る」=中国政府、大都市の警戒を強化―シンガポール華字紙
●18日、シンガポール華字紙・聯合早報が「中国が都市部における警察の警戒態勢を強化した」と17日に伝えた。緊急時には市民の安全を守るための発砲もありうるという。写真は2010年1月、ウルムチで警備にあたる特殊警察部隊。
2014年3月17日、シンガポール華字紙・聯合早報は、中国が都市部の警戒態勢を強化していると伝えた。
18日付で環球時報が報じている。
中国公安部は各大都市の公共の場での警戒態勢を強め、一般市民の集まる公共性の高い場でも、実弾を装填(そうてん)した銃を持った特殊警察が巡回している。
今後は上海、ハルビン、長沙、広州、成都、昆明、ウルムチ、ラサなどで特殊警察が組織される予定で、駅や港、空港、地下鉄、学校、病院、公園、繁華街、観光地、オフィス街などを含む人々が密集する場所を重点警戒地点とする。
北京市では「両会」後から引き続き警戒態勢が強化されており、装甲車が配備され、全天候に対応する24時間の警戒態勢がとられている。
警戒強化の背景には、湖南省長沙市で発生したウイグル族による白昼の連続殺傷事件などがある。
事件発生から数分で警察が現場に駆けつけており、特殊警察の迅速な対応に中国政府上層部が信頼感を強めたという。
ある時事問題アナリストは、
「これまでは事後対応となっていたが、今後は事件を未然に防ぐことに重点を置く。
緊急時には市民の安全を守るために発砲することもあり得るだろう」
と指摘している。
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【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】
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