2014年3月25日火曜日

中国・フィリピン対立エスカレート=(1):南シナ海領有権問題

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●南シナ海の領有権争いで緊張が高まっている(写真は3月3日、フィリピン・マニラの中国領事館前で、南シナ海の領有権争いを巡って中国政府に抗議する人々)


サーチナニュース 2014-03-25 12:33
http://news.searchina.net/id/1527827

中国・フィリピン:対立エスカレートの動き=南シナ海領有権問題

 南シナ海の諸島を巡る領有権の争いで、中国とフィリピンの対立が改めてエスカレートしつつある。
 フィリピンは30日に、同問題について国際海洋法裁判所に仲裁の正式申請をするとみられている。

 中国メディアは
 「フィリピンは南シナ海を中国から奪取し、米国との軍事提携を不断に増強している」
などと批判的に報じた。
 フィリピンと中国の領有権をめぐる争いで、最近になりとりわけ注目されているのが、スプラトリー諸島(南沙諸島)に属するサンゴ礁のセカンド・トーマス・ショール(中国語名は仁愛礁)だ。
  フィリピンは1999年、旧式の戦車揚陸艦を「故障した」として、同岩礁に座礁させた。
 それ以降、同艦に海軍陸戦隊を常駐させ
 「領土の確保と実効支配」
を続けている。
 中国はフィリピンに対して艦の撤去を要求しているが、フィリピン側は黙殺している。
 フィリピンは逆に、中国が同艦に対する輸送を妨害していると、抗議している。
  フィリピンでは23日付で、仁愛礁に座礁させている船の修理を予定しているとの報道があった。
 ただし
 「仁愛礁に新たな施設は何も作らない。船の解体を防止するために、内部の修理を行うだけだ」
との考えという。
 「現状の変更はしていない。中国も新たな行動を起こすべきではない」
との主張を込めたと考えてよい。

  フィリピン外務省は19日時点で
 「われわれは唯一、セカンド・トーマス・ショールに対する主権を有している。
 セカンド・トーマス・ショールまで(フィリピン領である)パラワン島からわずか100マイル(161キロメートル)だ」、
 「(セカンド・トーマス・ショールは)国際海洋法条約が定める(わが国の)排他的経済水域の中にある」
との考えを示した。
 さらに同省報道官は
 「当省はすでに、国際海洋法裁判所に仲裁を提案している」、
 「仮に状況がコントロールを失った場合には、米国がフィリピンの堅固な後ろ盾だ」
と述べた。

  なお、中国は南沙諸島のすべての島についての領有権を主張しているが、
 「どの国も異議を唱えていない、南沙諸島から最も近い中国領」
である海南島からセカンド・トーマス・ショールまでの距離は約1500キロメートルだ。
 フィリピン海軍出身で、内閣の一員である国家安全保障担当顧問の経験もあるロイロ・ゴレス氏は、セカンド・トーマス・ショールの問題について
 中国による「非理性的な領土獲得主義があらわに」になり、
 中国がセカンド・トーマス・ショールのを目標として
 「軍事的な解決を適用しようしている」
以上、フィリピンは
 「中国の動きに対する準備をせねばならない」
との考えを示した。

  ゴレス氏はさらに、「中国の欲望」は(セカンド・トーマス・ショールの近くにあり石油資源が存在する浅海である)レクト・バンク(リード・バンク)を「さらに大きな獲物」として得ることにあるとの考えを示した。
 中国政府はレクト・バンク(中国名は礼楽灘)をも念頭に置いて、
 「いかなる国家または企業、中国政府の許可を得ずして、中国が管轄する海域において石油や天然ガスにかんする事業を行うことは、すべて違法である」
との警告を繰り返している。
  フィリピンでは、1992年までに米軍が同国から撤退したことが、南シナ海に対する中国の攻勢の一因になった
との見方が強まっている。

 ベニグノ・アキノ大統領は2013年に
 「スービッグ湾における米海軍基地の復活を希望する」
と発言。
 両国は同年内に「米軍基地復活」などを念頭に、新たな軍事協定の締結を目指す協議を開始した。
 そのため、フィリピンでは
 「中国は、米軍がフィリピンに実際に進出してくる時点より前が、軍事的行動を起こす最もよいチャンスだとの考えている」
という懸念が高まっている。
 同国の一部メディアは
 「2020年までに各種の方法を用いて南沙諸島をすべて占領する中国の計画を示す文書がある」
と報じた。
 フィリピンの米国に対する接近について、中国紙「環球時報」は、
 「(フィリピン)国内で米軍の進出について懸念が高まり、民間による抗議が発生している」
と報じた。
 環球時報は、フィリピンの国防省が米国との軍事提携強化に反対する勢力に対して
 「中国人がわれわれに放水銃を用いても、彼らは怒らないのか。
 なぜだ? 
 われわれフィリピン人の精神はどこに行ってしまった?」
と批判したと伝えた。



レコードチャイナ 配信日時:2014年3月26日 17時9分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=85592&type=0

フィリピンが国際海洋法裁判所に提訴へ、中国との南シナ海領有権問題
=中国の報復に懸念も―比メディア


●25日、フィリピン英字紙・フィリピンスターは、フィリピンが中国との南シナ海領有権問題について、国際海洋法裁判所に提訴した場合、中国は報復措置を取る可能性があると伝えた。写真は南シナ海。

  2014年3月25日、フィリピン英字紙・フィリピンスターは、フィリピンが中国との南シナ海領有権問題について、国際海洋法裁判所に提訴した場合、中国は報復措置を取る可能性があると伝えた。
 環球時報が伝えた。

 フィリピンは30日に、同問題について国際海洋法裁判所に提訴するとみられている。
 デル・ロサリオ外相は24日、「訴えの法的論拠はほぼ準備できた」と表明した。

 こうした動きについて、ラファエル・アル・アルナン前内務自治相はフィリピンスター紙に対し、中国はバナナの輸入やレアアースの輸出などに制限をかける可能性があると指摘した。

 同氏はまた、フィリピンの電力供給の4割を一手に握る中国の電力会社による供給停止や通信ネットワークへのサイバーテロ、さらには反政府組織への資金援助なども懸念されるとしている。



2014.03.27(木)  The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40289

荒れる南シナ海:シエラ・マドレ号に対する圧力
(英エコノミスト誌 2014年3月22日号)

座礁した船が南シナ海の最新の火種になる危険をはらんでいる。

 ある意味では、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の政府高官が3月18日にシンガポールで開いた会合は、これ以上ないタイミングで訪れた。
 何しろ激しい領有権争いが繰り広げられている南シナ海の海域で危険なまでに緊張が高まっており、今回の会合は、衝突の危険性を減らすための「行動規範」で合意しようとする、果てしなく続くように思える試みを再開しようとしていた。


●南シナ海の領有権争いで緊張が高まっている(写真は3月3日、フィリピン・マニラの中国領事館前で、南シナ海の領有権争いを巡って中国政府に抗議する人々)

 そのわずか9日前、中国海警局は、フィリピン船舶が南シナ海で係争中の島の1つに近い座礁船に物資を運ぶのを阻止した。

 そしてフィリピンは3月30日までに、中国が南シナ海の大部分に対する領有権を主張する根拠は国際法に照らして無効だと主張し、国連の仲裁裁判所に証拠を提出することになっている。

 だが、座礁船と裁判の双方に対する中国の態度は、行動規範で合意に達しようとするには、今がどんな時にも劣らないくらい悪い時期であることを意味している。
 どちらのケースでも、中国は妥協には関心がないように見える。

 南シナ海はこの先何年も、この地域の不安と米中の対立の源泉であり続ける運命にあるように見える。

■フィリピン海兵隊員への物資供給を中国が阻止

 もともと第2次世界大戦中に米国が建造した船であるシエラ・マドレ号は、フィリピンでアユンギン礁、中国で仁愛礁として知られるセカンド・トーマス礁で1999年に意図的に沈められた。
 今ではこの船は水漏れする老朽船だが、この海域が国連海洋法条約(UNCLOS)に基づいてフィリピンが主張する排他的経済水域(EEZ)内にあることを象徴するため、一握りのフィリピンの海兵隊員が配置されている。

 しかし、中国もこの海域の領有権を主張しており、以前フィリピンとの間で見られたように――1996年にミスチーフ環礁で、そして2年前にスカボロー礁で――、とにかく支配権を確立することに専念しているように見える。

 中国が物資を供給する船を阻止したのは今回が初めてだ。
 中国は、物資供給船が建築資材を運んでいると主張し、建造物ができれば現状を変更することになり、将来の行動規範についてASEANと中国が2002年に調印した「宣言」に違反すると主張した。

 だが、シエラ・マドレ号が2002年に既に今の場所に存在していたことから、多少修理することは許されるように思える。
 フィリピンは、自国の船が阻止された後、駐留する海兵隊員に空から食料と水を補給した。
 フィリピンは今、再び船で物資供給を試みるという危険を冒すことを検討している。

 こうした中国の攻撃的なアプローチは、
 小さな成り上がりの隣国(人口は約1億500万人)がUNCLOSの下で中国に挑戦するという向こう見ずな行動に対して中国がフィリピンに加えている懲罰の一環だ。
 中国は、UNCLOSはそもそも主権の判断を下すことを目的としていないと指摘し、裁判所がこの訴えを受理し、フィリピンに有利な判断を示したとしても、それを無視すると言っている。

 だが、国際弁護士の優秀なチームを雇ったフィリピンは、間違いなく核心を突いている。
 中国はUNCLOSの締約国だが、1940年代の地図で示された「九段線」に基づいて南シナ海での領有権主張を展開している(九段線は実質的に南シナ海全体を中国として表している)。

 UNCLOSは、領海やEEZは国が主権を持つ陸地に基づいて与えられると規定している。
 九段線――中国は一度もそれを完全には説明していない――は、それとは逆の原理を示唆し、どうやら南シナ海と、その結果その中にあるすべてのものに対して中国に主権を与えているようだ。

 フィリピンにとっては、最近の出来事は中国のいじめのパターンの一部をなしており、スカボロー礁の近くで漁をするフィリピンの漁師に放水砲を向けることもあった。
 こうしたいじめがとりわけ怒りを買うのは、中国が南シナ海の豊かな漁場や豊富にあると言われる炭化水素資源へのフィリピンのアクセスを脅かしているように見えるためだ。

■フィリピンの孤立化を図る中国だが・・・

 中国の軍備増強は、フィリピンに無力感と不安感を感じさせている。
 フィリピン海軍の最新の船は、退役した米国沿岸警備隊の2隻の小型船とかつて香港の海域のパトロールに使われていた3隻の英国海軍の船だ。
 フィリピン空軍は戦闘機も爆撃機も持っていない。
 空軍とは名ばかりで力が伴わない、とフィリピン人たちは言う。

 外交的には、中国はフィリピンを孤立させようとしてきた。
 ASEANの残る加盟国9カ国のうち、2カ国(マレーシアとベトナム)も南シナ海で中国と領土問題を抱えており、中国の九段線はその他2カ国(ブルネイとインドネシア)のEEZを侵害しているが、中国政府はこれら9カ国のご機嫌を取ってきた。
 だが中国は、フィリピンのベニグノ・アキノ大統領は仲間外れにし、非難している。

 しかし、この戦略はうまくいっていないかもしれない。
 中国の行動は、他のASEAN諸国を不安にさせているからだ。

 中国との紛争がより広範にわたるベトナムは、漁をするのに中国の許可を得るよう外国船に求める、中国海南省が今年導入した新たな規制や、1974年に旧南ベトナム政府の駐屯地を強制退去させてから中国が支配している係争中のパラセル諸島(西沙諸島)近辺で行っていると伝えられるベトナム船への攻撃に危機感を募らせている。

 そして、南シナ海で中国との領有権争いを抱えていないことから、自国を潜在的な仲介者と表現するのを好んできたインドネシアも、今は九段線の範囲が原因で、中国と係争中であることを認めている。

 マレーシアは奇妙なことに、同国が領有権を主張する島嶼近くで、1月に同国の軍艦3隻が九段線の南縁をパトロールしていたという中国の主張を否定した。
 だが、いずれにしろマレーシアの中国との関係は、マレーシア航空370便失踪事件のマレーシア側の処理を巡る中国高官からの厳しい批判によって悪化している。

■ヤンキー、カムバック!

 中国のアプローチがもたらしたもう1つの結果は、この地域の他のところで見られる、
 米国が宣言したアジアへの「ピボット(旋回)」への歓迎だ。
 特にピボットの軍事的側面は、フィピンでさえ――いや、条約同盟国であるフィリピンではとりわけ――歓迎されている。

 フィリピンでは、一般市民の反米感情が1992年、米軍基地――米国の植民地支配の最後の名残――の撤去につながった。
 だが、フィリピン政府は国内に米軍を「ローテーション」配備させる取り決めについて協議しているが、今は一般市民の反発には直面していない。

 中国は、今のところ米国が、もう1つの支配的な地域大国が欧州で行ったもっと大きな領土強奪のことで頭がいっぱいであることも承知しているはずだ。
 米国は最近、九段線を非難する姿勢を明確にしており、UNCLOSの法廷闘争でフィリピンを支持している。
 だが、中国は、シエラ・マドレ号の戦いについては、米国はフィリピンに挑発的態度に出るよう煽り立てるよりも、フィリピンを抑制する可能性の方が高いことを知っている。

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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。



レコードチャイナ 配信日時:2014年3月31日 22時46分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=85824&type=0

フィリピンによるアユンギン礁不法占拠、絶対に容認しない―中国外交部

 2014年3月29日、新華網によると、中国外交部の洪磊(ホン・レイ)報道官は記者会見で、フィリピンが南シナ海の仁愛礁(アユンギン礁)へ補給船を派遣したこと、さらに一部メディアの記者も同行させたことについて、
 「仁愛礁の不法占拠を企むフィリピン側のいかなる行為も容認しない」
と強く非難した。

 洪報道官は
 「フィリピン側の行為は南シナ海問題を煽り立てるのが目的だ」
とした上で、
 「仁愛礁を含む南沙諸島の領有権は中国にあるという事実は変えられない。
 国の主権を守り抜く中国の意志と決意を揺るがすこともできない」
と述べた。

 その上で、洪報道官は、フィリピンに対し、
 「仁愛礁の不法占拠を企むいかなる行為も、また中国がASEAN諸国と合意した『南シナ海における関係国の行動宣言』を破壊しようとする行為も、決して容認しない」
と強調した。





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