2014年3月30日日曜日

案外弱い中国の戦闘力と軍の士気:兵器の数は増大するが、兵士のモチベーションは低下

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●「世界の軍隊ランキング トップ10」 赤い方が1位に近く、薄い黄色に近づくほど下位となる。 (IBTImes)


International Business Times 2014年3月26日 05時54分 更新
http://jp.ibtimes.com/articles/55922/20140326/980321.htm

世界の軍事力ランキング:米国とロシアはどちらが強い?

グローバル・ファイヤーパワー(Global Firepower)が「世界の軍事力ランキング2014年版」を発表した。
 世界の軍隊のトップ10内には、米国やロシア、日本が入っていることがわかった。

 世界の軍事力の強さは1位から順に、
1].米国、
2].ロシア、
3].中国、
4].インド、
5].英国、

6].フランス、
7].ドイツ、
8].トルコ、
9].韓国、
10].日本
となっている。

 日本については、
 「西側で中国が勢力を伸ばしている中、日本は自国の権力の構築に懸命である」
と評価されている。
 日本の防衛予算は491億米ドルで、ランキング3位の中国の1260億米ドルの40%ほどの規模だ。
 また予備軍人を含めた人員数は、日本が約30万人である一方、中国は450万人と、およそ15倍となっている。
 ただ、総人口に10倍以上の開きがあることは考慮すべきだろう。

 グローバル・ファイヤーパワーのランク付けでは、世界106か国の軍事力を50以上の指標から総合的に評価している。
 ゼロに近づくほど、強い軍事力を持った国としてランク付けしており、
 3位の中国は0.2594
 10位の日本は0.5581、
となっている。

 指標には、軍人数や兵器の装備、予算額、地理的要因などが含まれる。
 しかし、核保有力については評価対象に入っていない
 GFPは「各国の陸上、海上、空中での戦争を行う能力」のみを考慮したとしている。

 また、天然資源への依存度も加味したほか、海防の必要のない国に海軍力がないことなども考慮して、ランク付けをしているという。

 ランキング1位の米国は、防衛予算が6125億米ドルで、同2位のロシアは766億米ドル。
 予算額だけを見れば、8倍近い開きがある。
 ところが、兵士の人数はロシアが310万人で、米国が220万人となっており、米国の方が若干少ない。
 総人口はアメリカの方が2倍ほど大きいのにである。
 GFPのランク付けを見ると、
 1位:米国が0.2208、
 2位:ロシアが0.2355
 3位:中国は0.2594
と、僅差になっている。

 なお、GFPは、現在の政治的・軍事的なリーダーシップは、ランクには反映されていないと明言している。



レコードチャイナ 配信日時:2014年3月31日 8時10分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=85800&type=0

案外弱い中国の戦闘力と軍の士気――対日強硬路線は戦意高揚のためか


●中共中央軍事委員会は「中央軍事委員会深化国防和軍隊改革領導小組」(国防と軍隊改革を深化させる中共中央軍事委員会指導グループ)なる、非常に長い名前の領導小組(指導グループ)を設立した。写真は中国空軍機。

◆中共中央軍事委員会が新指導グループを設立

 2014年3月15日、中共中央軍事委員会は「中央軍事委員会深化国防和軍隊改革領導小組」(国防と軍隊改革を深化させる中共中央軍事委員会指導グループ)なる、非常に長い名前の領導小組(指導グループ)を設立した。
 組長は習近平、副組長は軍事委員会副主席の範長龍(陸軍)、常務副組長は軍事委員会副主席・許其亮(空軍)だ。

 同日開催された第一次全体会議で、習近平は中共中央軍事委員会主席として「重要講話」を行った。
 その内容は
●. 「国防と軍隊改革を深化させよ」
●. 「思想と行動を党中央と中央軍事委員会の決定に統一させよ」
●. 「強軍目標を軸として改革を促進せよ」
●. 「強固な国防と強大な軍隊を目指す」
など抽象的なものが多い。

 それがいくらか具体的に見え始めたのは、3月17日に全軍と武装警察部隊の各地域各レベルの中国共産党委員会に出された司令だ。
 中共中央軍事委員会は各支部の会議室に
 「毛沢東、トウ小平、江沢民、胡錦濤、習近平の標語を掲げること」
という奇妙な命令を出したのである。

 たとえば毛沢東の「正確な政治的方向と、質素で艱難辛苦に耐える気風および機動的な戦略戦術を指し示せ」とか、胡錦濤の「党への忠誠、国に報いる崇高な使命感」あるいは習近平の「党の指揮に従い、戦勝を収める」といった具合に、標語の文言まで指示している。
ここからは以下のことが読み取れる。
1. 軍隊に政治性をしっかり持たせること。
2. 軍隊が腐敗の温床となって軍規律が乱れており、党への忠誠に欠けている(特に中年以上の兵士や幹部は贅沢に慣れ、私腹を肥やすことに専念している)。
3. 若い兵士には艱難辛苦に耐えるガッツはない。

◆戦意がない「一人っ子世代」の兵士たち――薄弱な戦闘力

 この視点の正当性をさらに裏付ける通達が3月20日に発布された。
 題して「軍事訓練実戦化のレベルアップに関する意見」。
 「いつでも戦える準備をし、戦ったら必ず勝利すること」という習近平政権発足以来のスローガンを前提として、「本当に戦うんだ、ということを兵士に学ばせろ」ということを中心に、「教育」とか「使命感・緊迫感を持て」といった言葉が目立つ。
 筆者はこの「教育」という言葉に注目した。
 よくよく見れば、3月15日の新指導グループ第一次会議における習近平の重要講話の中には
 「戦闘力の薄弱さを認識して、改革の方向を定め、問題点を明確にせよ
という趣旨の文言までがある。
 これでようやく分かった。
 つまり、これら一連の動きから見えて来るのは
 「戦争を知らない若い解放軍世代に、
 戦争の実感をたたき込み、実践力を学ばせろ
という、
 中国の戦闘力の「思わぬ落とし穴」
だ。
★.中国の軍事費増加は前年比12.2%増(2013年)と大きいものの、
★.戦意となると、一人っ子世代が大勢を占めているため、意識高揚でもしない限り上がらない。

◆対日強硬批判は戦意高揚のため?

 中央テレビ局CCTVでは毎日のように日本がいかに右傾化しており、「日本軍国主義」への道を歩もうとしているかを、これでもかこれでもかと報道し続けている。
 この先鋭化する対日批判は、歴史カードを用いてアメリカを弱体化させ日米分断を謀るためだと筆者は論じてきた(詳細は拙著『完全解読 「中国外交戦略」の狙い』に書いた)。  
 しかし中国が展開する「日本軍国主義化」を中心とする「日本脅威論」は、案外、この「教育」を目的の一つとしているという確信を、軍事委員会新指導グループ設立と新しい通達により得ることができた。

 もっとも重要講話の中には「軍隊組織形態の現代化」という言葉があり、従来の陸海空軍以外に第二砲兵部隊(情報、偵察、核ミサイル迎撃を含む戦略ミサイル部隊)を重視した再編成が成され強軍に向かうのも事実だ。
 しかし中共中央政治局会議は「戦争はしない」という意思を示唆している。
 強軍目標は日米に対する防衛的な威嚇のための軍事力作り
とみなすべきだろう。
 武力から見た戦闘力においても、中国はとてもアメリカの武力には及ばない。
 それは命令指揮系統が「純粋な軍」ではなく、軍は「党の軍」であり、軍事委員会の「総政治部」が大きな力を持っているからだ。

 そのことは3月17日の命令である「毛沢東の標語」(政治方向性を定めよ)にも如実に表れており、また胡錦濤や習近平の「党への忠誠」とか「党の指揮に従う」にも表れている。
 それ故に戦闘指揮系統や作戦戦略に関しても、脆弱さを本質的に抱えているのである。

<遠藤誉が斬る>第28回)

遠藤誉(えんどう・ほまれ)
筑波大学名誉教授、東京福祉大学国際交流センター長。1941年に中国で生まれ、53年、日本帰国。著書に『ネット大国中国―言論をめぐる攻防』『チャイナ・ナイン―中国を動 かす9人の男たち』『チャイナ・ジャッジ毛沢東になれなかった男』『チャイナ・ギャップ―噛み合わない日中の歯車』、『●(上下を縦に重ねる)子チャーズ―中国建国の残火』『完全解読「中国外交戦略」の狙い』、『中国人が選んだワースト中国人番付』(4月1日発売)など多数。


 単純にいうと、
 中国兵士は「中国共産党バンザイ!」で死ねるか、その覚悟が作れるか、
であろう。
 拝金主義を唯一の社会思想にしてしまった現在において、
 財を捨てても可とする行動がとれるか
である。


JB Press 2014.04.03(木)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40341

あなどってはいけない、
本当の強さを身につけつつある中国海軍
アメリカ国防産業協会が伝える中国海軍増強の現状


 アメリカ海軍はマレーシア航空370便捜索活動に新型海洋哨戒機P-8ポセイドンを投入しているものの、漂流物発見回収用の艦艇を派遣していない。
 というよりは派遣する余裕がないと言った方が的確かもしれない。

 そんなアメリカ海軍とは対照的に、中国は海軍艦艇や海洋監視船など合わせて5隻を南インド洋に向かわせている。
 うち1隻は、3月30日現在、すでに捜索現場海域で活動中である。

 そのように、目に見えて質・両共に充実しつつある中国海洋軍事力に対して、アメリカ海軍をはじめとする国防当局はもとより防衛産業界でも、その強大化のスピードに警鐘を鳴らしている。
 アメリカ海軍としても海軍関連防衛産業界としても、オバマ政権による大幅な国防予算削減(海軍関連予算も大幅カット)に対して、中国海軍の飛躍的増強を繰り返し指摘することによりアメリカ海軍予算の復活を図ろうとしているものと思われる。

 例えば、アメリカ国防当局と防衛関連企業(およそ1500社)による米国国防に関する軍産複合団体であるNDIA(国防産業協会)の4月版リポートでは、中国海軍の飛躍的増強ぶりに関して改めて警鐘を鳴らす論文が掲載されている。
 その内容は、日本の防衛にとってもアメリカ以上に認識しておかねばならないものであることは言うまでもない。
 そこで、以下に要点のみを抜き出してみる。

■東アジア海域に限れば現在建造中の航空母艦で十分

 アメリカ連邦議会調査部(CRS)の報告書、「中国海軍の近代化」(2014年2月28日発行)によると、現在就役している中国海軍航空母艦「遼寧」は「そもそも航空母艦と呼ぶこと自体が若干寛大である」と言えるシロモノであり、あくまでも「入門レベル空母」である。
 もちろんこのような評価は、アメリカ海軍の現役航空母艦を標準にしての話であり、空母としての価値がないというわけではない。

 報告書が問題にしているのは、ウクライナ製の中古練習空母「遼寧」ではなく、それに引き続き中国自身が建造しており2018年ごろにはその姿を見せることになる
 “本物の”航空母艦を「中国がどのような目的で建造しているのか?」
という点である。

 もし中国海軍が現在のアメリカ海軍のような地球規模の海軍を目指すのならば、
 「おそらく、そのような目的に到達するには、さらに数十年の時間を要するであろう」。
 なぜならば、そのためには、現在建造中の空母ではいまだに能力不足と言わざるをえないからである。

 しかしながら、中国海軍の目的が東アジア海域、すなわち東シナ海・南シナ海・西太平洋の一部で「アメリカ海軍が実施できるのと同じことを実施する」というのならば、中国国産の比較的小型の非原子力動力航空母艦でも十二分に目的を達成することができる。
 すなわち、中国海軍はアメリカ海軍同様に、東アジア海域で確固たるプレゼンスを示し戦力投射能力を維持することができるのである。

 アメリカ海軍は前方展開配置がアメリカの国防に決定的に寄与していると考えているのと同様に、中国も空母を用いた前方展開を国防の決め手にしようと考えていると思われる。

■新型原子力潜水艦も実戦配備へ

 上記報告書のみならず米海軍関係者なども、航空母艦以上に警戒しなければならないのは中国海軍の潜水艦戦力である、と繰り返し強調している。

 アメリカ太平洋軍司令官ロックラー提督(海軍大将)は
 「中国海軍は極めて多数の潜水艦を建造している。
 このような潜水艦戦力は、中国自身の本土防衛が目的なのか? 
 あるいは他の目的があるのか?
と疑問を呈している。

 連邦議会に対する海軍情報局は、
 「中国は潜水艦戦力を、高度に武装した近代的敵海軍による介入阻止のための重要なる抑止力と考えている」
と証言している。
 また、かつてのような旧式で武装も貧弱であった潜水艦は姿を消して、現在の中国潜水艦戦力は近代化を成し遂げている、とも指摘した。

 実際に“近代的”潜水艦だけに限ってみると、中国はロシアからキロ級潜水艦を購入しただけでなく、039G型と041型という2タイプの通常動力攻撃潜水艦を国産している。

 また、旧式原潜を退役させて新型の093型攻撃原潜が就役しており、さらに最先端の095型攻撃原潜もまもなく実戦配備がなされる。
 これらに加えて、旧式で使い物にならなかった戦略原潜に取って代わって新鋭の094型戦略原潜も配備されており、さらに強力な096型戦略原潜も開発中である。

 海軍情報局は、以下のように結論している。

 中国潜水艦戦力は東アジア海域に限定されるものの、十二分な対水上艦戦能力とシーレーン破壊能力を保有している。
 対潜水艦作戦は常に大変困難な作戦である。
 そして中国潜水艦は実力を向上させている。海上自衛隊とアメリカ海軍はより一層対潜水艦戦能力の強化維持に努めなければならない。

■10年で見違えるほど進化した水上戦闘艦の能力

 新規事業である航空母艦や、強力な潜水艦戦力だけでなく、駆逐艦をはじめとする水上戦闘艦戦力の近代化も目覚ましい。

 ほんの10年ほど前までは、中国海軍水上艦戦力といえば老朽艦艇、旧式艦艇、少数の近代的艦艇が入り乱れており、センサーや兵装も新・旧それに国産・輸入とばらばらで、とてもバランスの取れた近代的海軍部隊とは言えないシロモノであった。
 ところが、今や中国海軍水上戦闘艦戦力は面目を一新させるに至った。

 例えば最新鋭の中国海軍052D型駆逐艦には、新たに開発された多目的垂直発射システムが搭載され、対空ミサイルや対艦ミサイルそれに対潜水艦ロケットのほか対地攻撃用長距離巡航ミサイル(LACM)も装備可能になった。

 そして中国国産のフェーズドアレイレーダーをはじめとする最新のセンサー類を装備し、アメリカ海軍・海上自衛隊やNATO海軍が使用している戦術データリンクシステム(リンク11、アップグレード予定)の性能をはるかに上回る「全軍総合データリンクシステム」を搭載している。

 かつては1つのクラスの駆逐艦を2~3隻程度建造して新しい設計に移行していた中国海軍は、同一クラスの駆逐艦やフリゲートを多数建造する方針へと転換した。
 要するに、軍艦建造能力を身につける試行錯誤の段階を乗り越えて、海軍戦略に基づき、それを達成させるべく計画された軍艦をより短期間で大量に建造する段階に移行したものと考えられる。

 例えば、上記の新鋭052D型駆逐艦は2018年までに少なくとも12隻が建造されることになっている。
 駆逐艦以外でも、2015年までに近代化されたフリゲートの保有数は56隻、新鋭コルベットは25隻、それに最新鋭ステルスミサイル艇は60隻に達すると、米海軍情報局は見積もっている。


●中国海軍022型ミサイル艇(写真:中国海軍)

■貿易依存国が強盛な海軍を持つのは当然

 ホノルルで中国海軍に対峙するロックラー提督や海軍情報局、それに多くの海軍アナリストたちは、中国海軍が、艦艇や兵器の性能を飛躍的に向上させたり保有数を増加させたりしているだけではなく、艦艇のメンテナンスやロジスティックス面での改良も進めている点を指摘している。

 それに加えて、
 「海軍ドクトリンの21世紀化や海軍将兵、教育訓練ならびに演習などの質の向上も見逃してはならない」
と海軍情報局は注意を喚起している。
 そして上記CRS報告書では
 「中国海軍は量的増加よりも質的強化の方が際立っている
と特記している。

 ヘリテージ財団の中国海洋戦略専門家であるディーン・チャンは、 
「中国は単に中国海軍を単体で強化しているだけではなく、より幅広い分野にまたがった海洋拒否能力を全体として強化している。
 もちろんその狙いはアメリカだけではなく周辺諸国をもターゲットに据えている」
と述べている。

 さらにディーン・チャンはこう語る。
 「中国は大量の食料、工業原材料、エネルギー資源を輸入している。 
 そして今や中国経済の『重心』は海岸地帯にある。当然のことながら、そのような中国経済と国民生活を支えるための貿易活動の大半は海上交通によってなされている。
 中国に限らずこのような経済活動を営む国家が海軍力を増強することはなんら驚くに値しないのである」

 つまり、今や中国の国民経済活動を支える支柱としての海軍力の強化は、アメリカ(それに本来ならば日本)同様に自然の成り行きと考えねばならないということだ。
 このように見なしているのは、ディーン・チャンや米海軍情報局だけではない。

■日本への影響はアメリカが被る影響の比ではない

 アメリカ国防当局や海軍関係者たちは、上記のように中国海軍のハードウエア、ソフトウエア両面における目を見張る躍進ぶりに危機感を募らせてはいる。
 しかし、肝心のアメリカ海軍のみならず国防予算は大幅に削減されているし、同時に強制財政削減による軍事支出の一律削減も継続している。
 したがって、とてもアメリカ海軍力を中国海軍の増強に対応させて増強することはできない状態である。

 それだけではない。
 中国海軍の強化ぶりを指摘している太平洋軍司令官ロックラー提督自身が、2014年夏のRIMPAC-2014に中国海軍を招待したのである。
 RIMPACは、ホノルルを拠点にしてアメリカ海軍が主催して隔年で実施される、多国籍海軍による合同訓練である。
 訓練には、アメリカ海軍、カナダ海軍、海上自衛隊、オーストラリア海軍、韓国海軍などアジア太平洋諸国海軍や海兵隊のほかイギリス海軍、フランス海軍それに2014年にはノルウェー海軍なども加わる。

 RIMPAC-2014への招待以外にも、提督が直接中国を訪問し、中国海軍高官との交流を深めているため、提督を“親中派”と見なす海軍関係者も少なくない。

 もちろん、中国海軍はこのようなチャンスを逃さず、3~4隻の軍艦をホノルルに派遣して多国籍海軍合同訓練で更に腕前を磨こうとしているのである。

 アメリカのように国防費の大幅削減という事態には陥ってはいないものの、防衛予算は微増状態にとどまり、その増額の大部分も人件費に充当されてしまう日本の状況は、やはりアメリカ同様に、とても中国海軍の躍進と歩調を合わせることなど思いもよらないといった状況である。

 もちろん闇雲に軍拡競争や建艦競争に突入する必要はない。
 しかし、アメリカと違って日本は中国海洋戦力の直接的脅威に直面している。
 日本政府・国防当局が中国海軍に対する最小限の抑止戦略をひねり出し準備する必要性・緊急性は、アメリカの比ではない。

Premium Information

北村 淳 Jun Kitamura
戦争平和社会学者。東京生まれ。東京学芸大学教育学部卒業。警視庁公安部勤務後、平成元年に北米に渡る。ハワイ大学ならびにブリティッシュ・コロンビア大学で助手・講師等を務め、戦争発生メカニズムの研究によってブリティッシュ・コロンビア大学でPh.D.(政治社会学博士)取得。専攻は戦争&平和社会学・海軍戦略論。米シンクタンクで海軍アドバイザー等を務める。現在サン・ディエゴ在住。著書に『アメリカ海兵隊のドクトリン』(芙蓉書房)、『米軍の見た自衛隊の実力』(宝島社)、『写真で見るトモダチ作戦』(並木書房)、『海兵隊とオスプレイ』(並木書房)、『尖閣を守れない自衛隊』(宝島社)等がある。



【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】




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