2014年5月6日火曜日

中国経済改革:始動半年、「安全運転」で着実に前進、キャピタルフライト(資本逃避)は起こるのか?

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ロイター 2014年 05月 6日 11:10 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPKBN0DM00X20140506

焦点:中国経済改革は始動半年、「安全運転」で着実に前進

[5日 ロイター] -
 中国政府が抜本的な経済改革の方針を発表してから約半年。
 共産党指導部はここまで、預金金利の完全自由化などリスクを伴う多くの改革について、緩やかな前進を基本とした「安全運転」で進めている。

 ただ過去半年の取り組みを俯瞰(ふかん)すれば、加速は段階的ながらも改革の勢いを損なわないスピードは維持されており、
 投資を燃料に猛烈な勢いで世界第2位の経済大国にまで成長した中国
 極めてスムーズにシフトダウンさせつつある。

 習近平政権が現在進めている改革は、1970─80年代にトウ小平氏が唱えた
 「底を確かめつつ川を渡る」経済実験の21世紀版と言える。
 当時と違うのは、
 現在の中国は多くの場所で一斉に川を渡ろうとしており、そこを流れる水もさらに深い
ということだろう。

 エコノミストらは、中国経済が国家主導型の工業中心型から、よりバランスの取れた市場主導型への転換に成功するには、抜本的改革の他に道はないと指摘する。

 しかし、金利の完全自由化や国有企業の解体といった改革は、短期的には大きな痛みを伴うものであり、実際の成果は長期的にしか見えてこない。
 今年の国内総生産(GDP)伸び率が24年ぶり低水準の7.3%にとどまるとみられる環境下では、そうした痛みを伴う改革は先送りされる公算も大きい。

中国政府系シンクタンクである中国国際経済交流センター(CCIEE)のシニアエコノミスト、Xu Hongcai氏は「われわれは比較的簡単なものから手を付け、難しい改革は後回しにしている」と語った。

 しかし、Xu氏らエコノミストは、経済改革のここまでの進展には満足しており、習国家主席と李克強首相が一貫して市場の役割強化を推し進めようとしている姿勢も評価している。
 北京大学国家発展研究院のLu Feng氏も「指導部は改革に専心しており、そこに疑問の余地はない」と話す。

 共産党第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)で野心的な改革計画が承認された昨年11月以降、政府はほぼ毎週、環境や資源価格、資本の流れや金融規制など多岐にわたる分野で何らかの改革を打ち出している。

 ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)の中国担当首席エコノミスト、ルイス・クイジス氏は
 「過去4─5カ月では実際、重要分野での着実な前進が見て取れる」
と述べた。

■<着実な前進>

 最近の約2カ月だけを見ても、当局は、海外から中国株への投資および中国本土から香港株への投資について規制を緩和し、海外事業買収や国内での合併・買収(M&A)の承認条件も緩和した。

 一方で、預金金利の自由化に道を開くことが期待される預金保険制度の導入は遅れており、人民元の変動相場制への完全移行や資本勘定の自由化も数年先とみられている。

 しかし、これまでの取り組みだけでもすでに、よりバランスの取れた資本移動を促す効果は出ている。
 政府の許認可権をこれまでより小さくし、会社登記制度を簡素化することなどでも目に見える経済的効果が見込まれる。

 実際、3月1日に施行された改正会社法では、最低登録資本金が撤廃されたが、その後の1カ月間で設立された会社の数は、前年同期比46%増となった。

 ガスなどの価格統制の緩和や、鉄道輸送料金の自由化も、中国政府が改革を前進させている分野だ。

 また各省政府も、新たな試験的計画の採用や経済特別区の設置に向け、中央政府と同様の強い決意を見せている。
 こうした取り組みがどの程度の影響をもたらすかはまだ判断できないが、その目線がさらなる開放や競争、そしてスマートで環境に優しい技術に向いていることは確かだろう。

■<難しい判断>

 とはいえ、中国政府の前途には依然として、巨大国有企業の既得権はく奪や銀行業界の開放といった最も判断の難しい改革が待ち構えている。

 また、政府の優先課題である都市化推進には避けて通れない戸籍制度や土地所有権の改革も、ほとんど手つかずのままだ。

 エコノミストらは、国と省で歳入と歳出が入り組んでいる予算制度の透明化についても、実現はゆっくりとしか進まないとしている。

 共産党上層部は、
  改革の影響を受ける国有企業管理職や省政府当局者からの抵抗は、今後強くなる一方だと認めている。

 ただ、そうした点や景気の減速、債券市場で初のデフォルト(債務不履行)があったことを考慮しても、抜本的経済改革を始動してから半年の歩みを総合的に振り返れば、政府は道を踏み外してはいないと言える。

 RBSのクイジス氏は、過去2カ月間に政府が打ち出した景気浮揚策によって、改革が二の次になった印象があるかもしれないとした上で、
 「しかし改革面で積み重ねられた対策にも目を向ければ、改革プロセスが依然として進行中であることが分かる」
と語った。



JB Press 2014.05.07(水)  柯 隆
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40582

引き金を引くのは外国人投資家、
中国の不動産バブルはいつ崩壊するのか?

 経済学の専門家でも中国経済の行方がますます分からなくなっているようだ。

 世界銀行のチーフエコノミストだった林毅夫北京大学教授(経済学)は2012年に
 「中国経済は向こう20年間、年平均8%の成長を続けることができる」
との楽観的な見通しを示した。
 林教授の論理は、中国は新興国としての比較優位を生かし経済成長を続けることができるという比較優位仮説だった。
 分かりやすく言えば、中国はこれまでの成長モデルをこのまま堅持すれば、これまでと同じような高成長を実現できるということである。

 しかし中国経済の内実を考察すれば、これまでの比較優位が失われ、逆に明らかな比較劣位に陥っていることが分かる。
 まず、経済成長と共に人件費が上昇している。
 また、人民元も切り上がっている。
 何よりも30年以上続いてきた一人っ子政策により、労働力の供給が需要に追い付かなくなりつつある。
 すなわち、中国経済は労働制約によって減速を余儀なくされている。

 中国国家統計局が発表した2014年第1四半期の実質GDP伸び率は、政府が掲げる7.5%の成長を下回り、7.4%だった。
 長い間、中国経済は10%ないしそれ以上の成長を続けてきた。
 政策当局は景気の下振れリスクよりも、速すぎる成長が失速することを心配していた。
 しかし、今の経済状況は明らかに変わってしまった。
 政府が何らかの景気対策を講じなければ、景気が大きく落ち込む恐れが出てきた。

■弱まる経済成長のエンジン

 世界貿易機関(WTO)の発表によれば、2013年、中国の輸出入の貿易総額は初めてアメリカを追い抜いたと言われている。
 中国は世界一の貿易大国になったということである。

 しかし、中国の税関によると、2014年3月、中国の対外輸出は前年同期を下回り、マイナス成長だったという。
 林毅夫教授の仮説では、中国経済は自らの比較優位を生かし輸出を増やせば、8%ないしそれ以上の成長を実現することができるということだった。
 しかし、中国の輸出の伸び率は明らかに鈍くなっている。

 否、鈍くなったのは輸出だけではない。
 経済成長率を計算するときに使われるのは「輸出-輸入」、すなわち純輸出である。中国の純輸出のGDP比は2007年の8.8%から2013年の2.8%に縮小した。
 このことは、中国の貿易総額の規模は拡大しているが外需の牽引力が次第に弱くなっていることを意味する。

 無論、中国のような大きな経済が外需に依存して成長するのはそもそも現実的ではない。
 中国経済を牽引するもう1つのエンジンは国内の投資である。
 中国の設備投資とインフラ投資などの固定資本形成のGDP比は50%近いレベルに達している。
 問題は、国内消費が十分に盛り上がっていないということにある。

 簡単な理屈だが、企業の設備投資が増えると国全体の生産能力が拡大する。
 だが、国内消費が十分に増えないため、その製品や商品を輸出に向ける必要がある。
 輸出はグローバル市場の景気動向に影響され、拡大する余力は限定的である。
 結果的に、中国国内で在庫が増え、主要産業の過剰設備問題が深刻になる。
 中国政府の発表によれば、鉄鋼、アルミ、セメント、板ガラスなどの素材産業は軒並み25%以上の過剰設備を抱えていると言われている。

■金融機関の資金調達と運用の危うさ

 過剰設備を抱える企業は往々にして多額の有利子負債を抱えている。
 マクロ的に見た場合、中国の与信総量を示す社会融資総額(2013年末残)のGDP比は200%を超えている。
 この統計から分かることは資金効率が悪化していることである。

 大量の資金が金融機関を通じて国有セクターに仲介されている。国有セクターは投資を拡大し、経済成長を牽引している。
 しかし、このような成長の陰で、金融機関のバランスシートに巨額の不良債権が生まれてくる。

 もう1つの問題は企業の資金調達にある。
 不動産開発のデベロッパーはシャドーバンキングシステムを通じて巨額の資金を調達し、地上げを行っている。
 これにより不動産バブルが生まれている。

 国際金融市場では、中国のシャドーバンク問題に注目が集まっている。
 マスコミで報道されているシャドーバンク問題とは、正規金融機関が販売する「理財商品」と呼ばれる投資信託のことである。
 国有銀行を中心とする正規金融機関は、預金以外にさらに多くの資金を集めるために、理財商品を販売している。
 理財商品は預金金利よりも高い利回りを約束することで人気を集めている。

 なぜ正規金融機関は理財商品で資金を集めるのだろうか。
 理財商品は預金ではないため、金利規制や預貸比率規制といった商業銀行法の金融規制を受けない。
 すなわち、金融機関にとって自由で使い勝手のよい資金を手に入れることができるというメリットがある。

 では、金融機関はその資金をどのように運用しているのだろうか。

 金融機関にとっての調達金利は高いため、その運用もより高い利回りを実現する必要がある。
 しかし、商業銀行などの金融機関は、融資はできても投資することは認められていない。
 そこでこれらの金融機関は、より高い収益性を実現できる事業に融資を行うようになる。その大半は都市再開発に伴う不動産投資プロジェクトや、銅やアルミなどの資源価格の高騰を見込んだコモディティ市場での運用である。

 都市再開発の主役は、地方政府が設立した国有の投資会社である。
 国有企業への融資には金融機関はほとんど躊躇しない。
 同時に、高成長に慣れている金融機関はコモディティ市場が軟調に推移することを想定していない。
 このような思惑こそ不動産バブルや資源バブルをもたらす背景である。

■キャピタルフライトが第2次アジア通貨危機を誘発する

 中国政府が不動産バブルの抑制に乗り出したのは習近平政権が誕生する前からだった。
 しかし、それは不動産バブルの崩壊を恐れていたというよりも、住宅価格の高騰に対する国民の不満を鎮めるため、という狙いが大きい。
 中国では賃貸市場は十分に発達していないため、若者が結婚するとたいていマイホームを購入する。
 都市部の住宅価格は一般家計の年収の20倍以上に達している。

 もちろんマイホームを購入する実需が不動産バブルをもたらすことはない。
 中国では、不動産バブルを引き起こしているのは投資と投機を目的とするファンドや富裕層の個人である。
 近年、巨額のホットマネーが中国に流れたのもこれと関連する。

 では、中国の不動産バブルはどのような形で破裂すると考えられるのだろうか。

★. 最も可能性が高いのは、外国の投資家がその引き金を引くことである。
 外国のファンドや個人投資家は中国で大量の不動産を保有しているが、最近、香港の投資会社が資金を引き揚げているとの情報が出ている。

 中国政府が不動産市場を買い支えしなければ、不動産価格が大きく下がる可能性が出てきた。
 そこで地方政府の投資会社は、土地の売却益や不動産投資の期待収益を実現できなければ、銀行から借り入れた資金を返済できなくなる恐れがある。

 共産党中央三中全会(2013年11月)で採決された改革を深化させる「決定」では、経済改革の一環として市場メカニズムが機能する環境づくりを強化することが明記されている。
 中国では、市場メカニズムの機能を妨げているのは国有セクターの存在と政府による市場への関与である。
 国有セクターの改革が遅れれば、これより先、心配されるのは外国人投資家が資金を引き揚げ、人民元の暴落をもたらすことである。
 すなわち、キャピタルフライト(資本逃避)が起きるということである。
 そうなれば、中国発の第2次アジア通貨危機が起きることになる。
 習近平政権には、改革を先送りする一刻の猶予も残っていない。

Premium Information

柯 隆 Ka Ryu
富士通総研 経済研究所主席研究員。中国南京市生まれ。1986年南京金陵科技大学卒業。92年愛知大学法経学部卒業、94年名古屋大学大学院経済学研究科修士課程修了。長銀総合研究所を経て富士通総研経済研究所の主任研究員に。主な著書に『中国の不良債権問題』など。



レコードチャイナ 配信日時:2014年5月7日 5時40分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=87626&type=0

「中国のGDPは世界一ではない」
突如中国が謙遜し始めた理由とは―米メディア


●5日、米ラジオ局ボイス・オブ・アメリカ中国語版サイトは、在米華人ジャーナリスト、何清漣氏のコラム「統計捏造(ねつぞう)が引き起こした中国の“国際抗争”」を掲載した。資料写真。

 2014年5月5日、米ラジオ局ボイス・オブ・アメリカ中国語版サイトは、在米華人ジャーナリスト、何清漣(ホー・チンリエン)氏のコラム
 「統計捏造(ねつぞう)が引き起こした中国の“国際抗争”」
を掲載した。

 先日、世界銀行の報告書「国際比較プログラム」が発表された。購買力平価(PPP)換算のGDPで中国が年内に米国を抜き世界一になるとの見通しが示された。
 世界的大国としての復興を目指す「中国の夢」が早くも達成されるわけだが、中国政府は決して喜んではいない。

 英紙フィナンシャル・タイムズによると、
 「中国が世界一のGDP」
の報告書を撤回させようと中国は抵抗を続けてきた。
 結局、関連する経済統計の開示を拒んだほか、報告書には
 「中国国家統計局は国家比較プログラム発表の結果を公式統計データとは認めない」
との注釈まで記載されることになった。
 中国の台頭が注目されることで、国際的な圧力が高まることを恐れたためだとみられている。

 「中国を恐れた欧米諸国はありもしない中国の衰退を吹聴している」
と主張してきた中国政府が、
 中国世界一の報告書を否定するために抵抗を続けるとは何とも不思議だ。
 そう何氏はからかっている。

 実態を把握することを仕事とする民主主義国家の統計と違い、
 中国では国家の繁栄をアピールすることが統計部門の任務となる。
 そのため公的な統計には都合のいいデータしか記載されず、都合の悪い情報は内部資料として扱われているという。



2014.05.19(月)  Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40716

危機を警戒する中国が日本から学ぶべき教訓
投資家や政策立案者は日本がやったことではなく、言うことに倣え
(2014年5月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


●今の中国には、日本の過去の失敗から学ぶべきことがたくさんある〔AFPBB News〕

 官僚や銀行家、エコノミストが今、日本の失敗から学んだ方がいい国があるとすれば、それは中国だ。

 今回が初めてではない。
 10年前、筆者は1990年代の日本の銀行危機に関する本を書き、それが中国でベストセラーになった。
 当時は大いに驚いたものだ(特に、筆者は中国本土で誰にも版権を売らなかったからだ)。
 だが、今にして思えば、あの出来事は象徴的だった。

 中国が今、バブル崩壊寸前の1980年代の日本とよく似た、信用供与と不動産価格の爆発的な伸びを経験しているという事実はどうでもいい。
 1980年代の日本のように、中国は今、銀行中心で国家統制下にある金融システムを自由資本市場が主体の制度に変えようとしている。
 そして、経済が成熟するに従い、この転換は必要になるが、巨大なリスクを生み出すことにもなる。

 それゆえ、一部の中国政府高官が静かに日本の失敗から何を学べるか自問していることは当然だし、さらに、外交関係の冷え込みにもかかわらず、日中両国の中央銀行が内々に規制緩和と不良債権について議論していることも理にかなっている。

■中国の投資家と政策立案者が学ぶべき「6つのD」

 では、中国の投資家と政策立案者はどんな教訓を学ぶべきなのか?
 少なくとも半ダースの教訓がある。
 何なら、これを「6つのD」と呼ぶといい。

1].まず、「減速(deceleration)」は害を及ぼし得る。
 日本経済が急成長していた1980年代当時、銀行融資はうまくいっていた。だが、1990年代に経済が減速すると、不良債権が急増した。
 それは分かりきったことに思えるかもしれないが、日本の銀行と官僚は不意を突かれた。
 中国の成長率が7%を割り込もうとしていることを考えると、中国の当局者は注意した方がいい。

2].「デフレ(deflation)」は極めて有害で、特に銀行にとっては命取りだ。
 物価が下落する時、債務負担が大きくなる。
 通常は不良債権も増加する。ここでも問題は明白だが、日本の銀行はデフレに対しても準備ができていなかった。

 もし中国がデフレに陥るようなことがあれば、警鐘が打ち鳴らされるはずだ。
 中国の消費者物価は上昇しているが、生産者物価は26カ月連続で下落している。

3].「否認(denial)」は悪影響をもたらす。
 日本の銀行は不良債権を隠すことで悪名高かった(邦銀は1992年に不良債権はたった8兆円だと述べていたが、2000年になると、これを100兆円に修正した)。
 この事実の否認は危機を遅らせたが、やがて訪れるショックをずっと大きいものにした。

 中国の銀行が既に帳簿をよく見せるために財務上の操作を行っていることを考えると特に、中国は注意を払うべきだ(ほんの一例を挙げるだけでも、一部の銀行が不良債権を隠すために「信託受益権商品」といった不透明な仕組みを利用している様子を見るといい)。

 実際、報告されている不良債権の数字はどうしようもないほど楽観的すぎるように見える(公式には、中国の銀行の不良債権は資産の1%程度だが、オックスフォード・エコノミクスのような独立系の観測筋は10~20%だと話している)。

4].「ドミノ(domino)」は倒れることがある。
 投資家は1990年代半ばまで、日本の金融機関は政府、そして緊密に結び付いた複合企業の「系列」を通じて企業パートナーから黙示的に保証されていると考えていた。
 このため、小さな金融機関が数社破綻すると、投資家は何を信じていいのか分からなくなり、システム全体への信頼を失った。

 中国はこの事実に留意すべきだ。
 中国のシステムも、定義が曖昧で黙示的な保証――銀行と影の銀行の双方に対する保証――に依存しているからだ。
 例えば、信託銀行がいくつか破綻したら、伝染性のパニックが生じる可能性もある。

5].「預金保険(deposit insurance)」は重要だ。
 日銀関係者が最近指摘したように、日本の当局者は1990年代に、預金保険なしでパニックを封じるのは難しいということを学んだ。
 中国はこれを理解していると主張しており、最近、独自の預金保険制度を導入する計画を発表した。

 だが、制度はまだ実施されておらず、中国政府は過去10年間で何度か預金保険制度の導入について口にしたことがある。

6].「意思決定(decision-making)」も重要だ。
 日本の金融システムを悩ました問題の1つは、政治経済が権力の空白を生んだことだった。
 資本市場は意味のある銀行監視を実施するだけの力を持たなかったが、国家官僚はもはや、素早い決定を強要することができなかった。

 投資家は今の中国で誰が実際に決断を下しているのかを慎重に見極め、不人気な対策を講じる力が彼らにあるかどうか問う必要がある。指導者たちは一枚岩ではない。

7]..「7つ目のD」もあるが・・・
 もちろん、やはりとてつもなく重要で、最初の6点を相殺する可能性さえある7つ目のDがある。
 それは「dollar(ドル)」、つまり、中国が保有する莫大なドル準備(および他の現金の山)である。

 結局のところ、日本の過去から得られるもう1つの教訓は、
★.十分なお金という武器が国にあれば、
 バブルが崩壊した場合、
 銀行の資本を増強し、経済的ショックを和らげることができる
ということだ。
 中国は1999年に小さな銀行危機が起きた際に、既に1度これをやった。
 今のバブルが弾けたら、再びそうするかもしれない。

 「中国人の方が(2007年当時の)米国人よりも(日本からの教訓に)耳を貸す気があるようだ」。
 日本のある政策立案者はこう語る。
 「それはいいことかもしれない」

■信用バブルが膨らむほど後始末が困難に

 だが、
 悲しい事実は、中国の信用バブルが大きく膨らむほど、その後始末をするのが難しくなる
ということだ。
 データが成長減速を指し示していることを考えると、なおのことだ。

 とにかく、中国人が金融の歴史書から正しい教訓を学び続けることを祈った方がいい。
 さもなければ、日本の当局者は近く「だから言っただろう」という言葉を翻訳しなければならないかもしれない。

By Gillian Tett
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【輝かしい未来が描けなくなった寂しさ】


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